出版社内容情報
幻は、幻が消えたときに、幻とわかる。――脳の中からの鮮やかな現場報告!
「時間という一本のロープにたくさんの写真がぶら下がっている。それをたぐり寄せて思い出をつかもうとしても、私にはそのロープがない」――たとえば〈記憶障害〉という医学用語にこのリアリティはありません。ケアの拠り所となるのは、体験した世界を正確に表現したこうした言葉ではないでしょうか。本書は、「レビー小体型認知症」と診断された女性が、幻視、幻臭、幻聴など五感の変調を抱えながら達成した圧倒的な当事者研究です。
*「ケアをひらく」は株式会社医学書院の登録商標です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
94
41歳でうつ、50歳でレビー小体型認知症と診断された。初めに匂いがわからなくなり、感覚が異常を来し幻覚が見え時間感覚が消失した。それでもこの本を書いている。子どもの頃から書くことが好きだった。医学書の冷たい説明文の中に病気があるのではない。無理やり着せられた病という着ぐるみを自ら脱ぎ捨てると、いつでも自分自身になれるのだ。安心、自信、余裕さえあれば思いがけない力がわいてくる。脳って不思議なおもしろさに満ちている。私には誤作動する脳があるだけなのだ。病に悩んだ著者の実体験とそこから抜け出す自らの力が印象的。2020/12/28
けんとまん1007
90
まだまだ未解明なことも多いし、また、それ故にか誤解も多い。精神の病と、脳の病についても言える。それは、ご本人だけでなく、周囲にいる人も含めて。また、症状も絶えず変わりうることからくる不安も大きい。先の見通しが立てにくいことは辛い。その当人である樋口さんの記録。時間の経過とともに、樋口さんのこころの揺れが、痛いほど伝わってくる。誤作動する脳・・というタイトルが、とてもうまく表現されている。自分の意思とは違うように働いてしまうこと。折り合いをつける・・・と、簡単には言えない。2022/04/25
ネギっ子gen
66
【「レビー小体型認知症」と診断された女性の当事者研究】医学書院のウェブマガジン「かんかん」連載記事を大幅加筆して単行本化。幻視・幻聴など自身の変調を見事に描写し、<自分の病気を公開してからは、“ヘンな人”として生きることを許された気がして、私は以前よりも自由になりました。誰もが、どこかに必ず人と違うちょっとヘンなところを持っているのですから、みんな“ヘンな人”として生きるようになれば、こんなに息苦しい社会にも風が通って活気が生まれ、病気になる人も減るのではないかと妄想したりします>と。この記述に、共感!⇒2021/01/31
岡本正行
61
認知症への認識が浅かった。著者は、レビー小体型認知症、はじめ症状からうつ病と診断された。医師が毎年、交替したことから治療、投薬が変わり、症状は悪化したり、経過したした。その挙句、認知症と診断された。その症状たるや。他人事とは言え、極めて悲惨である。そのなかで対処法、薬、生活そして発生する生活上での問題への対応、家族への配慮等々非常に厳しいものがある。一般的な認知症しか知識として持っていなかった私として、あまりにも落差が大きく、場合によっては自分も認知症になるかもしれないと思いながらも、驚きは反省する。2023/11/16
shikashika555
53
圧倒的な臨場感。 従来は「健常者が外から類推するしかなかった」認知症の症状を、罹患者本人が詳細に正確に記録している。 得てして我々は認知症患者の言動を「病がさせているもの」という予断を挟んで見がちである。 その事が却って患者本人の知性や人間性を理解する妨げになっていると感じた。 認知症になれば、庇護されて生きるしかないと思うのは誤りだ。 我々と同じく社会に生き 社会に還元するものを持つ。 ただ、少し脳のクセや誤作動があるから、それと折り合いをつける努力がいる。 その努力は健常者のそれよりは →2020/04/07
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