出版社内容情報
「精神現象学」は哲学史上最も難解な書物の1つとされている.ヘーゲル哲学の土台をなすこの著作をその体系の中にどう位置づけるべきか.原著の構成順に従って内容を詳細に解説し,その全般的特質を明らかにする.
内容説明
「現象学」と「論理学」、そして絶対知。著者は、カント・フィヒテ・シェリングとの関連において『精神現象学』の生成の意味を明らかにしながら、その一方でヘーゲルの思想全体との関係において、その構造を全巻にわたって、徹底的に分析している。難解な『精神現象学』を、どこまでもヘーゲルそのものに即して、くまなくその内容を解明してくれる高度な手引書である。
目次
第5部 精神、精神的実体から精神の自己知へ(直接的なる精神;精神的“自己”の第一の形式;教養と外化の世界;「“啓蒙”」、あるいは人知と迷信との闘争;絶対自由と“恐怖”、精神的“自己”の第二の型)
第6部 精神の自己知から絶対精神へ(道徳的世界観;自己確信的精神、“自己”あるいは自由(精神的“自己”の第三の型)
宗教、神秘主義かヒューマニズムか)
第7部(結論「現象学」と「論理学」、絶対知)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
またの名
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ある主張を定立すると行為する時になってその主張をズラさざるを得ず、それを自覚してしまい偽善に陥る道徳意識の矛盾を認めたヘーゲルにとって「罪がないのは石のみ」。このように様々な事象が常に矛盾を抱えて内部から崩壊していく様を見ていた観察者の意識も他の意識もまた、対象の中に今度は意識自身を認め、さらに対象を理解しながら対象を生み出す相互作用が発見される弁証法。自分の内に自分と矛盾する自己否定を抱え込むことが自己同一性だとする逆説は、やがて生命は自身の生を否定する死の欲動を内に抱えると定義するフロイトに流れ込む。2018/11/18