感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
8
ヌアー族では結婚の際に夫側から妻側に婚資として牛が支払われる習俗がある。財の移動や複合を婚姻の第一要件に据えるこの習俗は、血統の継承という西洋的な婚姻と異なる形態を創出すると本書は記す。1つは夫が死ぬと未亡人が夫の兄弟と結婚し、後に生まれる子を亡夫の子とする亡霊婚であり、さらに不妊の女性が夫となって妻を娶り、妻が他の男との間にできた子供を育てる女性婚である。血統重視のリネージ集団と血統が辿れないクラン集団からなるトーテミズム社会の複雑さから婚姻の背後に財の移動を見る著者は、家族概念の多様性も見出していく。2024/03/04