出版社内容情報
現代世界の直面する危機は多面にわたり根が深い.この未曾有の危機にさいして,どのような政治理論が現実への対抗理論たりうるのか.自然・人間・政治の再生をめざすパラダイム転換の必要性と,新たな理論の創造.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うえ
9
「シュトラウスにとって、政治哲学の出発点は、現実の市民が有する政治についての前科学的・常識的な理解である。そして政治哲学が規範的たらざるをえないのは、それが対象とする現実の政治行動そのものが、本来的に善悪についての思考を含んでいるからであり、規範的であるからである。かかる善悪についての思考が自覚化され、善き生活、善き社会についての意見がそれについての真の知識に置き換えられていったとき、そこに政治哲学が生ずる…「政治哲学の意味…は今日も明白である。すべての政治行動は保存か変化のいずれかを企図する。」」2020/05/16
D.Okada
3
まず、政治学の科学化、実証主義化、(価値に対する)相対主義化を批判し、戦後の「政治哲学の復権」に寄与したJ.ロールズ、L.シュトラウスの理論を検討したうえで、表題である「政治理論のパラダイム転換」について論を展開する。自然観の転換ではアリストテレス的な目的論、ホッブズ的な機械論を批判的に検討して、生命系中心の新しい有機的自然観を示す。次いで、人間観の節では、倫理的アナーキーを批判し、新しい人間像として、主体を最初から世界内存在として捉え、自然的社会的連関から規範を導出するということを示す。(続く)2012/03/02