感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kthyk
14
経験と体験とは共に一人称の自己。しかし、経験では<わたくし>がその中から生まれてくるのに対し、体験はいつも私がすべてとなる。有正の25年に及ぶパリ生活はこの「経験」についての思想。彼は<わたくし>を探し続け、聖堂と音楽、孤独なヨーロッパの体験を語る。<わたくし>と私、そこには我々(日本)とはまったく異なる大きな狭間がある。アナタとワタシの二人称に終始する我々は第三者、他者への関心が希薄。しかし、経験から生まれる思想は二人称からは決して生まれるものではない。漱石や荷風、藤村のパリ体験は有正とは大きく異なる。2021/08/20
金北山の麓に生まれ育って
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【西洋哲学と格闘していた時代】35年前ぐらいに高校生だった頃、是非読むべきだと言われていた本なのでフト気になって読む。延々と続く西洋哲学と日本思想の違いへの思索の独白、それにまとわりつく敗戦以降の政治的矛盾なのかな同時代的苦悩。森さんは誠実に考えていたんだろうが今となっては「西洋かぶれ」かも。ニューアカ(特に浅田彰が現役で書いていた頃)まで「西洋かぶれ」が跋扈していたが以降は過剰に有り難がりはしなくなった。戦中戦後に西洋思想と正面から向き合う辛さは今理解するのは難しい。2019/09/12