出版社内容情報
オウム事件や少年犯罪など揺れ動く日本社会について発言し反響をよんだ「海亀日記」や生命科学や宇宙論への考察など,時代と格闘し,新しい人間のあり方を創造の現場から模索する作家の思考を伝える最新エッセイ集.
内容説明
21世紀わたしたちはどこへ行くのか。戦争や環境危機、続発する少年犯罪…ゆれ動く現代世界を真摯に問い、宇宙論や生命科学などの新しい知をみつめながら世界と人間のありかたを模索する作家の最新エッセイ集。
目次
1 海亀日記
2 “混成”化する世界へ(浮上してくるもの;コソボ戦争と想像力;永遠なるインドの水爆;東アジアの春;世界の交差点で;混血の海辺で;淋しい都市で ほか)
3 道づれの本―若者たちに
著者等紹介
宮内勝典[ミヤウチカツスケ]
1944年ハルビン生まれ。主な著書に「南風」「グリニッジの光を離れて」「金色の象」「宇宙的ナンセンスの時代」「ニカラグア密航計画」「戦士のエロス」「バリ島の日々」「ぼくは始祖鳥になりたい」「善悪の彼岸へ」
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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踊る猫
30
いま読み返すと、もちろんある程度までは古びてはいるけれどそれでも「文学」の持ちうる力について考えさせる生真面目さと切実さを感じ、思わず襟を正す。その力についてぼくなりに考えるに、それはこの世界のカオス(聖と俗、陰と陽が入り乱れてある無秩序な状況)を実態として受け容れその中でこそ自分なりの秩序を自分で定め(だがもちろん、それは他者をただちに拒絶することを意味しない)、そして生き延びることだろうと思う。そこからニーチェやフォークナー、メルヴィルやドストエフスキーかつ中上健次や深沢七郎に補助線を引く営みへと至る2024/09/13
捨拾(すてろう)
1
好きなミュージシャンが、舐める様に愛読していると知り、手に取った作家。なるほど、実に効く文章である。野田知佑、藤原新也、中島らも、自身がティーンエイジャーだった頃、脳髄を撃ち抜かれた作家達に連なる破壊力を持っている。陳腐な表現ではあるが、もっと早く出会いたかった。彼の小説も読んでみよう。2018/03/04