内容説明
非道な主家に対する怨霊報復談であり、四大怪談のひとつである皿屋敷伝説は、鹿児島、福岡から岩手まで、全国に48カ所の伝承地がある。この伝承地を探訪し、伝説発祥の背景と伝播の系譜を探った。
目次
皿屋敷伝説の発生と伝播(筑豊にもあった皿屋敷伝説;皿屋敷伝説の発生と伝播;お菊の皿異聞;「皿屋敷」のルーツはどこか;皿屋敷伝説類縁説話)
皿屋敷伝説を訪ねて(全国に点在する皿屋敷伝説)
著者等紹介
伊藤篤[イトウアツシ]
1915(大正4)年、福岡県中間市生まれ。福岡県立東筑中学、旧制福岡高校を経て、1940年、九州大学医学部卒業。精神医学専攻、医学博士。福岡県立太宰府病院長、福岡県精神衛生センター所長などを歴任
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感想・レビュー
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jam
91
「四谷怪談」が筆頭の皿屋敷伝説は、全国48か所に残るという。作品は医師であった著者が、病をおしてフィールドワークし上梓したもので、渾身の筆を遺した。なぜ、著者は命の終わりに、かくもこの伝説に傾倒したのだろう。井戸は地の底、つまり比喩的には地獄へと通じる。そして、穴と言えば村上春樹氏である。村上は穿たれる穴をテーマに作品を起こし続ける。穴とは何か、どこへ通じるのか。そして、伝説では、怨念は幽霊となり井戸から現れる。著者は生命の最期を自覚すればこそ、生命とは何か、心とは何かを知りたかったのかもしれない。2017/08/06
mimm
1
皿屋敷の怪談って、元ネタひとつで歌舞伎なんかで膾炙してったのかな~とか思っていたら、全国に同じような話(しかも名前まで似てる!)が散らばっていたとは。しかも1557~1807年頃までまた幅広く。その上結局どれが本家本元か、未だ誰も分からないなんて。著者様最後の書となった本。病を押して各地に足を運び、伝承の地を見て回っていたとは。きっと元気だったらその背景にあった元の事件(それが皿屋敷事件に転化されていると思う)ももっと洗い出されただろうに…。悔やまれます。2015/10/29
まりこ
0
兵庫県尼崎の深正院ジンショウインだけ写真が微妙にブレているせいか何となくただならぬオーラを感じた。各地に点在する皿屋敷跡やお堂、石碑など皿屋敷にまつわる場所が地図と共に掲載されているので訪れてみたい人は良いかも。写真がカラーだったら良かったなぁ。それにしても口承で全国へ広がったとしても全国に皿屋敷にまつわる屋敷や石碑やら名前のついた池や滝やが存在するのは不思議な気がする。