内容説明
「茶漬けの中でも、もっとも美味いもののひとつに、はもの茶漬けがある」。食が細くなる盛夏に電車で通った寿司屋、自分で作る八種類もの懐かしい雑炊、昆布と鰹節での出汁の取り方…。書・絵画・陶芸の大家、北大路魯山人は自ら料亭「星岡茶寮」を主宰するほど、食にこだわる通人だった。魯山人が追究した旨いものとは何か。稀代の美食家の思いを余すところなく伝える珠玉の食エッセイ集。
目次
1 寿司道楽の話
2 魚を食う話
3 鍋料理と雑炊の話
4 贅沢茶漬けの話
5 「和食」の極意
6 魯山人料理語録
著者等紹介
北大路魯山人[キタオオジロサンジン]
1883年生まれ、書画、篆刻、陶芸、漆芸という多岐にわたる芸術で秀でた足跡を残す。一方で料亭「星岡茶寮」を主宰、美食の道を探求する。1959年没
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
334
魯山人は初読。この類の本を読んでいると、つい揚げ足をとりたくなってしまう。まず、随所に女性蔑視的な発言が目立つこと。世代と年齢を考慮するにしても、なんだかオヤジが空威張りしているようだ。また、江戸前寿司の伝統云々と言う割には「第一に素晴らしいまぐろが加わらなければ寿司を構成しない」などと堂々と述べる。今のスタイルの「早すし」が誕生したのは江戸後期だが、その時期にマグロは下魚とされていて、「づけ」にでもしないと喰えたものじゃないとされていたのだから。こういうのがいたるところに散見されるのだ。それもご愛敬?2019/06/26
Shoji
36
食通の陶芸家である北大路魯山人が書いたエッセイ。明治から昭和にかけて生きた人のようだが、良く言えば食に関する美意識がとても高い人だと思った。悪く言えば、超上から目線の人だ。北大路魯山人なる人物、なかなか難しい親父だな、これが感想です。2020/10/11
まっと
17
北大路魯山人という人物には10代の頃から興味があったが(入口は陶芸家として、その後マンガの「美味しんぼ」を通じて美食家として)今回初めて魯山人の書いたエッセイ集に触れてみた。いずれの文章も当時の世相等々あろうが「手厳しい」(時代のなせるワザか?)。そこにある考え方には賛否あるであろうし、その語り口調はともかくとして、美食を愛し、追い求め、細かなところまでこだわり、そのための手間や時間を厭わない姿がそこには有った。「道」を追求した者だけが達する境地のようなものもあるのだろう。2022/10/29
さくちゃん
10
少ないページ数ながらも魯山人の食に対するこだわりや厳しさをひしと感じられる一冊。正直小うるさいなと感じる箇所もあるけれど、「雑炊の要は、種の芳香を粥にたたえて喜ぶこと」だなんて、この一文をとってもあまりの感性の豊かさに脱帽、さすが魯山人先生。語録でも何度も繰り返される、「料理は素材が何よりも大事」「食器は勿論のこと盛り付けなどの見た目にも気を配るべし」など常に心に留めておきたいです。2015/07/27
Kazuhisa
2
元も子もないことを言えば、器は道具でしかありません。 道具である以上、道具として使えてこそ、その道具の美はあるのではないだろうかと。 この本では、庶民的な食材1つ取っても(例えばお茶漬けや雑炊など)、食材の吟味から詳しく紹介されており、文章の節々から食への敬意すら感じられますね。 と同時に、食器へのこだわりも書かれており、魯山人の器や食に対するこだわりというのは、「器+食=美」の方程式に則ったからこそ、陶芸と食に妥協を許さず、まだ誰も見つけていない美を貪欲に探究していたのかなと思う次第です。