内容説明
アニメ作家・宮崎駿の仕事は「監督」という枠に収まるものではない。大気の流れからメカ、建物、動物、人間、草木、そこに流れていた歴史まで。画面上のすべてを自らの能力で統率する。地下に潜ったかと思ったら、今度はとてつもなく高い場所に上がっていく…世界は横にだけではなく縦にも見渡せるのだ。そして悪夢と解放を示す“落下”と“飛翔”―本当の表現とは一つしかない、それを探しているのだと言う宮崎駿。そもそもアニメーション自体が「らしさ」の表現であり、我々の何気ない動き、そして観察力に対する批評である。やがて、宮崎作品とともに生きてきた我々の時代とは何だったのか、あるいは彼が時代に何を残してきたのかが見えてくる。
目次
第1章 スタジオジブリ作品を振り返る
第2章 少年と泥棒と探偵と―初期作品をたどる
第3章 漫画映画の伝統から「日常生活の冒険」まで―宮崎駿前史
第4章 「心を白紙にしてくれる映画」―宮崎駿論
第5章 フレームを超えた表現を―『千と千尋の神隠し』
著者等紹介
切通理作[キリドオシリサク]
1964年東京生まれ。和光大学卒。文化批評、エッセイを主に手がける
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
13
「千と千尋」までの宮崎駿さんが携わったアニメ作品の解説・当時のインタビューなどからの論評。未来少年コナンとルパン(カリオストロの城)が見たくなる。トトロの解説のところでパブロフの犬のごとく泣き出してしまい家族に心配される(私がサツキくらいだった頃母が入院していたので思い出すのだ)。内容としては当時の社会の反応などが含まれ資料性が高い。保存版にしたいと思っている。大好きだし尊敬を超えたところにある存在なのだな、と改めて認識。普段は恥ずかしくてツンデレな態度を取っているのだが。2011/12/09
そのあとに続く
10
アニメーターとして初期に携わった『未来少年コナン』から『千と千尋の神隠し』まで、仔細に読み解きながらも宮崎駿氏における創作姿勢の変化を追体験するものでもある。職人気質な部分だけを見がちだったが、かといって物語そのものに安易な二項対立は持ち込むことなく解釈は視聴者に委ねる(放り出すことなく)のは信頼するからだろう。ナウシカの源流は『堤中納言物語』といわれて、王蟲との関係性が腑に落ちた。自然讃美やテクノロジーの危機は根本ではなく、当たり前との思考方法に対する異議申立ての表現とも言えるかも知れない。2015/07/06
void
6
【★★★☆☆】'01年。'08年・増補前のやつ。作品要約にもかなり頁を割き、インタビューなどの作品背景はもちろん、当時の批評家等の意見なども多めに取り入れている。批評としての深さはそこまでないものの力作。 『ナウシカ』以降の映画論を中心に読んだが濃淡がですぎる・厭味のでるスロー/ストップモーションを使わずに、結果ありきではなくその瞬間瞬間の過程に平等な力点が置かれているという指摘が腑に落ちた。清濁ある自然観、少女観、正義と悪役…宮崎駿の世界観は好きだなぁ。視点が増やせたし、また映画観たいなぁと思える良著。2013/05/15
getsuki
5
文庫版は「ポニョ」までの増補版なのを読メで知りました……(遠い目宮崎駿監督の原点や、創作についてなど事細かに書かれているが、ページ数を納めるための段組が読みにくくて苦戦。せっかくの文章の面白みが減ってしまった気分がした。2015/09/01
k
5
「『宮崎作品では、心が動くと空気が動く、風が吹く』と浦谷は指摘する」。『千と千尋』までの作品をインタビューや評論の引用を多用して解説。新書とは思えないボリュームで宮崎作品に興味のある人には入門書として良いかな。ちくま文庫から増補版が出てたことは読了後にしりました。2012/12/23
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