岩波文庫<br> クレーヴの奥方 - 他二編 (改版)

岩波文庫
クレーヴの奥方 - 他二編 (改版)

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  • サイズ 文庫判/ページ数 379p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003251515
  • NDC分類 953
  • Cコード C0197

出版社内容情報

道ならぬつらいしかし清い恋に悩んでいるクレーヴ公の奥方が,夫君にそれを打開けて庇護を求めたために,心に悩むものを二人生じる結果になった,悲しい純潔な恋の物語である.フランス心理小説の古く輝かしい伝統の最初の礎石ともいうべき名作で,他に『モンパンシエ公爵夫人』『タンド伯爵夫人』を収める.一六七八年.

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

354
17世紀後半のフランス文学。ただし、物語の世界はそれよりおよそ1世紀前のフランス宮廷。小説の後半にヌムール公が透見をするシーンがあるが、当時の読者たちにとってはまさに宮廷での色恋沙汰を透見する趣きであっただろう。物語のスタイルはまさにそのように構成されている。これを読む限りでは、当時の宮廷や貴族社会はまさに恋愛至上主義(もっとも、その裏では権謀術数が渦巻いてもいたのだろうが)。その中にあって、心は度々揺れ動くものの、最後には自分の「意思」を貫いたクレーヴの奥方の生き方は、時代を超えて近代的であっただろう。2018/02/12

新地学@児童書病発動中

125
本当に美しい恋愛小説。夫のいるクレーヴ夫人はハンサムな貴公子ヌムール公の求愛を受けて心が揺れ動く。彼女の心の動きが精緻に描かれる。物語としても面白く、主人公の行く末が気になって、ページを捲ってしまう。きりりと引き締まった古典的な文体で、甘ったるい形容詞などは使われていない。訳者はこの物語を訳す時に、源氏物語の文体を意識したそうだ。そのためにこの訳書には雅やかな雰囲気が漂っている。クレーヴ夫人はヌムール公を愛しながらも、身を任せることなく自立した人間として生きることを決意する。この決断に深く感動した。2017/04/08

藤月はな(灯れ松明の火)

83
男性に委ねるしかなかった貴族社会と恋が当たり前の嗜みだった宮廷勤めの中で如何に相手と自分の家柄の品位を立派に保つのかを女性に説く三つの短篇集。表題作は成功例。自己中心的な恋心で自滅したアンナ・カレーニナに比べ、夫の面子を最後まで立て、恋人に依存せずに自立する奥方様の姿は、当時は稀有で女性がしたくてもできなかった姿でもあったのだろう。一方で自己中心的だった恋人にしろ、奥方様に対する愛を確信してからのクレーヴ殿の愛人達への愛を一方的に断ち切っているのも何だかな。作者はちょっと辛辣で優しい方なのかもしれない。2017/05/17

かごむし

44
17世紀に刊行された、100年ほど前のフランス宮廷を舞台にした恋愛物語。社会が綿密に書き込まれているのもリアリティがあっていいし、ストーリーの展開も心地よい。しかしなによりも、登場人物の微細な心の動きを、ダイナミックな鼓動として読者に感じさせるところが、この本の素晴らしいところだと思う。この作品を読んだ恋をしている人、かつて恋をしていた人は、自分の恋を照らし合わせながら、みんな読後感が違うのだと思う。300ページ弱というちょうどよい大きさに納められた、美しい作品。文学を読む喜びというものが味わえると思う。2017/08/25

うらなり

36
感動度4.5内容はアンナカレーニナなどと似ているのだが展開がとても自然で心理描写が見事です。というか心理描写しかない。わたしはこのような小説が好きです。自然の描写などは邪魔でこのように心の変化だけを克明に追ってもらうほうが一気に読める。『テス』を思い出します。2022/07/18

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