内容説明
心の哲学者サールによる心と言語の関係を扱った関連研究『言語行為』『表現と意味』に続く第3作。言語のもつ表象能力は心の志向性に由来し、この志向性はそもそも心的状態そのものに内在しているとの立場から、「意味」の問題の研究を通じて志向性概念を論じ、最後は「心身問題」にまで論究する。この志向性の概念が、はたして人間による「理解」と機械による「理解」との決定的違いになりうるか否か、心の哲学とAI(人工知能)論とが脱構築を試みるための試金石ともいえる書である。
目次
第1章 志向的状態の本性
第2章 知覚の志向性
第3章 意図と行為
第4章 志向的因果
第5章 バックグラウンド
第6章 意味
第7章 志向的状態および言語行為に関する報告の内包性
第8章 意味は頭のなかにあるのか
第9章 固有名と志向性
第10章 エピローグ 志向性と脳
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
borisbear
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4章「志向的因果」が特に良い。ヒューム的法則性因果概念は知覚/行為因果の延長上に位置付けることでよく理解できる。因果関係にせよ帰納可能性にせよ、一般的な「ある程度信頼可能な規則性の存在」は、世界の中の物事を理解したり適切に行動したりしようとする努力自体の前提であって、それ自体真偽を検討可能な命題ではない。一般に多くの動物の適応や学習についての前提条件であり、因果経験が組み込みの感受性としてあっても不思議でない。サールの叙述は緻密かつ親切で、「バスケットにシュートを試みる」など具体例もいい。2018/06/05