出版社内容情報
日清・日露、二つの戦争に勝って世界を驚かせ、列強の仲間入りをした大日本帝国は、その胎内に様々な矛盾をはらみつつ明治の幕を閉じる。〈解説〉尾高煌之助
内容説明
富国強兵策により急激な近代化と工業化を推進した日本は、国運を賭した日清・日露の両戦役に勝って列強の仲間入りを果たす。だが、そこに成立した大日本帝国はしだいに民衆との亀裂を深め、深刻な危機に直面する。この危機に対する体制再編の過程で、明治は幕を閉じる…。
目次
日清戦争
日本帝国の明暗
産業革命
労働運動の初幕
内地雑居
藩閥・政党・政商
社会主義への歩み
考えるホワイトカラー
東亜の嵐
日露戦争
反戦の闘い
勝利の悲哀
「普請中」の日本
三井と三菱
日韓合併
大逆事件
明示の終焉
著者等紹介
隅谷三喜男[スミヤミキオ]
1916年(大正5)東京に生まれる。41年(昭和16)、東京帝国大学経済学部卒業。卒業後間もなく満州昭和製鋼所に勤務。戦後は東京大学教授。のち信州大学教授を経て、東京女子大学学長、恵泉女学園理事長を歴任。東京大学名誉教授、日本学士院会員。専門は労働経済論だが、労働運動史、近代日本の思想史やキリスト教社会史など研究範囲は広い。2003年(平成15)、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
97
この著者の隅谷先生はマルクス経済学とは一線を画していたと思います。どちらかというとキリスト教の立場から労働者などの実態調査をしていたかと思われます。五味川純平の書いた「人間の条件」にも登場しているようです。この本はその経験などやご自分の研究された成果を十分に吐き出されているのではないでしょうか?2015/11/20
AKa
7
日本におけるいわゆる産業革命以降、2つの戦争を経て成立・成長する資本主義社会が記述の主軸であり、それに対する抵抗として社会主義思想や労働・民衆運動が描かれる。要するに経済史からの視点であるが、前巻の色川が民衆史からの叙述であったことも併せると、このシリーズにおける明治史は、帝国憲法制定と帝国議会開設という重要な出来事があったにもかかわらず政治史からは語られなかったこととなる。それについては、「歴史=政治史」というイメージから敢えて外すことによって複眼的な歴史像を作ろう、という意図があったのだろうか。2019/08/14
訪問者
4
本書を読んで少し驚いたのは、日清戦争、日露戦争共に、日本にとって焦点となったのは清ではなくあくまでも朝鮮だったという事。そして大逆事件後の時代閉塞等、現在の日本の情勢と重ね合わせるように読み進めた。2023/02/02
しびぞう
4
歴史の本を読んだ感想としてあと何度「歴史は繰り返す!」と思わなければならないのだろうか。100年ほど前の日本の事が書かれているが、現代にもいるような人たちのことが書いてあった。強い国に住みたいけどそのために国に貢献するのはまっぴらごめん、という人がこの時代にもいたのかと笑ってしまった。高い志をもってして変化や革命を成し遂げても、その子孫がその恩恵の中で腐っていくということが、あと何度繰り返されるのだろう。我々も腐らせてしまうのか、それとも、引き継いだ土壌に先人が夢見た花を咲かせるのか。2022/10/07
sansirou
3
日露戦争でずいぶん軍部が建前ばかりになっていってるのがわかる。この時代の日本を知ることは重要ですね。2020/01/28