内容説明
戦後間もない昭和二十一年、鎌倉に、新しい日本にふさわしい教育を目指す市民たちによって小さな大学が生まれた。わずか四年半しか存在しなかったこの大学は、教育の一理想として今日なお語りつがれている。服部之総、林達夫、村山知義、吉野秀雄など個性溢れる教授陣。なかでも学問の総合的交流を試みる哲学者三枝博音は、二代目学長として学問の深さと厳しさ、そして楽しさを伝えた。教育と学問の原点を鎌倉アカデミア精神にみる。
目次
序章 鎌倉アカデミアがめざしたもの
第1章 学問の深さと厳しさ
第2章 楽しい学園をめざして
第3章 多彩で個性的な教授たち
第4章 鎌倉アカデミアに来い
第5章 種蒔く小さな集団
終章 光は闇の中で見える
感想・レビュー
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うえ
8
昭和21年から4年半だけ続いた学びの場、鎌倉アカデミアと学長三枝に関する伝記。光明寺の境内を仮校舎とした鎌倉大学校は相当個性豊かな教授陣を揃えていたようだ。ともあれ期せずして唯物論者になった三枝博音という哲学者について知ることはできた。「兵役を終えた博音は、東京帝国大学の文学部哲学科に復学した…フッサールの哲学思想を学び、やがてドイツの哲学者ディルタイの研究へとすすんでいった…軍隊生活の中でも、大学生活においても忘れることのできない課題は、「どう宗教と向き合い、どう宗教と対決するのか」ということであった」2022/10/01