内容説明
榎本武揚は増加する日本の人口問題解決策として「殖民協会」を設立し、明治30年、メキシコに36人を送りこんだ。通称これを「榎本殖民」という。だが長い異国への旅路の果てに入植しながら、未来永劫存続するはずだった理想郷建設は、わずか3ヵ月で瓦解する。しかし、取り残された人々の中で日墨協働会社が設立され、日本人のメキシコにおける様々な事業が展開された。未知の国で苦難を克服して生きぬいた明治人の足跡を辿る。
目次
序章 日本メキシコ交流史
第1章 榎本武揚と殖民計画
第2章 「夏草やつわ者共の夢の跡」
第3章 日墨協働会社の盛衰
第4章 崩壊後の榎本殖民地の変遷
第5章 時の流れの中で
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
BLACK無糖好き
4
貴重な感動の記録。忘却の中の移民史。36人をメキシコへ送り込んだ「榎本植民」は杜撰な計画のため崩壊するが、日本の海外進出のための先駆者たる自覚を持つ入植者らによって、日墨協働会社の設立により事業展開を図る、更に辺境の地での教育の実践、「西和辞典」の編纂という文化的遺産も残し、地域社会との融合を果たす等、両国の関係発展に貢献する。榎本植民の舞台アカコヤグアには「榎本植民記念」の記念碑があるが、訪れる日本人は少ないらしい。記念碑には芭蕉の句が刻まれている「夏草やつわ者共の夢の跡」。2015/05/08
kazutox
2
1994年の本。古本屋でなんとなく購入。書名の「榎本植民」は日本初の「殖民」(出稼ぎ移民ではなく、永住を目指した計画的な移民)となった、1897年メキシコ・チアパス州への移民のことです。この事業自体はあっという間に崩壊します。本書は、その残党や新しく渡ってきた日本人の活躍を紹介しつつ、足跡を残すことなく消えていった多くの日本人に思いを寄せる、というものです。2022/06/21
鬼山とんぼ
1
私は明治の偉勲で榎本が一番好き。彼のメキシコ植民プランは調査不足のために一生の不覚ともいえる失策となったが、初期移民に照井亮治郎をはじめ志操が高い人々がいてくれたお陰で辛うじて根付くことができ、ささやかだが堅固な日墨友好の基礎が築かれた。この本が生まれたきっかけは当地赴任の若手外交官だった著者の車が山中でエンコしたことだった。その後、丹念に移民の子孫を訪問して後付け取材をしたことによって美しいドキュメントが完成した。短いが中身は要点を掴んでおり、労作に頭が下がる思いがする。2019/01/10
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