内容説明
長女藤代は踊りの師匠の梅村を相談相手にして、遺産相続を自分に有利にしようと画策する。それまでの慎ましやかだった性格からは想像できないきつい態度にでる次女の千寿。そこに番頭の思惑と、妾文乃が妊娠していた事実がからまって泥沼の様相を深めてゆく。だが、嘉蔵が生前周到に準備していた「胎児の事前認知」という驚天動地の方法によって金の亡者たちの野望に断が下される。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mariya926
97
山崎豊子さんの国際的な社会派の物語も好きですが、大阪の船場も好きです。この本は5代に渡って女系家族で女性が経済と権威を持ち男性を支配する家庭の中で起こった相続財産の分与問題で、最後の最後でどんでん返しが起こります。山崎豊子さんにどんでん返し!?と意外でしたが、途中から男系家族の六郎さんの縁談が入ってきたあたりからとてもドキドキで面白くなってきました。内容は始終ドロドロでしたが、話し方が「~のん?」「~かしらん」と可愛いので、大阪弁も可愛いやんと思いました。後2冊積んでいるので今年中に読みます。2018/01/14
抹茶モナカ
71
遺産相続を巡り、駆け引きが激化する下巻。大番頭の宇市の腹黒さが凄い。最後にどんでん返しが用意されていて、女系家族の解体というテーマが提示される。読み物として面白い。外国文学を読んでいるような、「なんか、しっくり来ない」感があって、それが上手く作用したように思った。そう思ったのは、僕だけかな。2015/02/05
choco
57
再読ながら堪能できた下巻でした。昭和30年代に描かれたこの作品をこれほど完璧に相続法を学び小説の中に取り入れ大どんでん返しのラストを描く山崎先生に、流石!といいたい。2016/09/03
ともくん
55
誰もが相手を騙していたと思ったら、最後に待っていたのは。 1億円も相続できるのであれば、それ以上の欲はかかないと思うが…… 自分には想像もつかない世界。 まさに、化け物たちの化かしあい。2018/10/09
研二
43
前半に引き続き、笑い方や云い方などの描写が充実している。後半は、森林に関するすったもんだが特に面白い。前半からの主要メンバーである大番頭・妾・3姉妹・婿養子・叔母以外に、踊りの先生や山守・薬局のおばさんも面白いキャラクターで活躍し始め、さらに賑やかになる。基本的にはキャラクター小説だと思うが、山林や相続に関する知識がわかりやすく紹介されていて情報小説としても面白い。山崎豊子の小説の中では、『白い巨塔』や『華麗なる一族』よりも面白いかもしれないと思った。2017/04/27