出版社内容情報
著者(一八九〇‐一九八〇)の生家青山氏は水戸藩士で,曾祖父・祖父は『大日本史』編纂局総裁などをつとめ,徳川斉昭や藤田幽谷・東湖父子とも近しく交わった.その祖父の残した日記や手紙,親戚故老の思い出話に基づいて,流血に明けくれる幕末水戸藩の内実,ひとびとの暮らしぶりをいきいきと描き出す. (解説 奈良本辰也)
内容説明
著者の生家青山氏は水戸藩士で、曾祖父・祖父は『大日本史』編纂局総裁などをつとめ、徳川斉昭や藤田幽谷・東湖父子とも近しく交わった。その祖父の残した日記や手紙、親戚故老の思い出話に基づいて、流血に明けてくれる幕末水戸藩の内実、ひとびとの暮らしぶりをいきいきと描き出す。
感想・レビュー
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月をみるもの
14
「おんな二代の記」( https://bookmeter.com/reviews/88163924 ) は山川菊栄の母、青山千世が水戸から東京に出て来るところから始まる。千世の父/祖父は、黄門様が始めた「大日本史」の編纂局の総裁を勤めた水戸藩の頭脳だった。御三家でありながら勤皇思想の出発点でもあった水戸藩は、幕末の無残な内戦で数多くの犠牲者を出した。山田風太郎「魔群の通過」( https://bookmeter.com/reviews/77640653 ) の背景にいた人々の、生の息遣いが感じられる。2020/03/14
アメヲトコ
6
1974年単行本、91年文庫化。著者の曾祖父青山延于、祖父青山延寿は水戸藩校弘道館のトップをつとめた儒学者で、著者はその青山家の史料を用いながら幕末の水戸藩の実情を活き活きと描いていきます。末期の水戸藩は陰惨な同士討ちの連続なのですが、吉村昭『天狗争乱』の最後に天狗党の生き残りとして登場する武田金次郎(耕雲斎の孫)が水戸帰還後にシリアルキラーと化していたことを知って暗澹たる思いになります。水戸学の恐ろしさよ!2023/12/21
マカロニ マカロン
6
個人の感想です:B+。『恋歌』(朝井まかて)を読んで、幕末の水戸藩内の天狗党、諸生党間の内紛劇を知り、朝井さんが参考文献として挙げているこの本を関連本として読んだ。山川菊栄は1890年生まれの婦人運動家だが、母方の祖父、曾祖父が水戸藩の高名な儒学者、歴史家。その祖父の残した日記、手紙、故老の話などに基づいて、そのすさまじい流血の混乱ぶりが綴られている。幕末の勤王佐幕の争いを描いた本は数々あるが、その当時の女性や、庶民がどのように暮らし、騒動に巻き込まれていったのかという観点での歴史はこれまでにないものだ。2017/06/27
bouhito
4
御三家でありながら35万石であり、しかも実質的には25万石だったとされる水戸藩。その貧しさこそが、よくも悪くも起爆剤になってしまったのか、水戸藩は攘夷思想という明治維新の礎となる思想を生みながら(ちなみに水戸藩は敬幕である)、天狗党というテロ集団をうみ、果ては血みどろの内戦に陥ってしまった。他の本では、美少年とされている天狗党筑波勢の首謀者・小四郎が「色の黒いおかめのような顔」とされているのがおもしろかった。また、水戸藩はなかったが参勤交代は一大公共事業らしく、日雇い労働者も雇用していたとのこと。2015/09/27
馬咲
3
御三家という肩書きに対して不十分な経済基盤への自覚からくるコンプレックスを始め、実践行動へと人々を駆り立てる要因を早くから蓄積していた社会だったのだと感じた。弘道館開校のような先進的事業も、激しい政争の場と化して学究どころではなくなり、逆にもつれにもつれた闘争を生む土壌となってしまった。封建制に纏わる不条理がとりわけ色濃かった社会だったからこそ、世相の動揺に敏感に共鳴して尊皇攘夷の先陣を切ったのだろう。しかし内側に矛盾を抱えたままの強行軍は、結局そのエネルギーを内輪の殺し合いに帰結させてしまった。2023/08/19