読書という航海の本棚＞道元、鎌倉仏教、禅 - 紀伊國屋書店ウェブストア｜オンライン書店

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和書『正法眼蔵』を読む - 存在するとはどういうことか講談社選書メチエ

道元と言えば、鎌倉時代初期の禅僧だとい…

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道元と言えば、鎌倉時代初期の禅僧だということは、日本史の教科書に書いてあったと思う。単なる知識の域をでない記憶だった。2009年５月に『正法眼蔵』という書物の存在を、『遊学Ⅰ』（松岡正剛、中公文庫）で読んで知るまでは。
　道元が書き残した仏教の思想書が、今でも読まれていることを知った。この時に、初めてこの僧侶を生きていた人物として意識できたのだ。教室で教わるというのではなく、読書を遊ぶという姿勢で仏教理解への入り口を見つけることができたのだ。
　その後、2018年の７月に、記念すべき「千夜千冊」の文庫版の1巻目である『本から本へ』（松岡正剛、角川ソフィア文庫）を購入した際に、『正法眼蔵』が最初に取り上げられていることに脳天を打たれた。しかも、「世界書物の快楽」という第一章の筆頭である。
　これで、心を動かされなければ「読書家」を自称できないと自戒したものの、原典は遠すぎる。文庫版だけでも、註釈本を含めると多くが存在する。その中で、紀伊國屋ウェブストアの「新着順」で最初に出てきたのが本書である。不真面目な選択の基準のようだが、ここでも「遊ぶ」ことを念頭においた。
　著者は住職。読み始めたばかりだが、丁寧に諭すような筆の運びに好感がもてる。学者が紐解く学術的な論述ではなく、説法を聴いている安心感がある。
原著を参照する箇所も多く、裏表紙に記載の「現代人のための入門書にして決定版」という宣伝文句に偽りはなさそうだ。
　「存在するとはどういうことか」との問いが副題にある。「道元を読み始めたら類書や欧米の思想書を読むきがしなくなる」（『本から本へ』）らしいが、私は、幸い、それを懸念する段階まできていない。「存在論」の彼方にある「形而上学」までを視野に入れ、本書をゆっくり読み進めようと思う。知の連鎖で戯れる時間が至福の時となる。
　仕事や家事の隙間に読むような内容ではない。夜の静謐な時間で少しずつページをめくる。脳内で音読すれば、「座禅をする時にでるようにα波が」（『科学と芸術の間』坂根厳夫、朝日新聞社）理解を助けてくれることだろう。
　10日ほど前に読み終えたが、本書で出会った複数の仏教用をめぐる夢を見た。３回目のワクチン接種を済ませた日の夜だ。局部の痛み以外の副作用はないが、今回は、この異物投入が脳を刺激したらしい。悟りに近づいた心境だ。

タグ道元、鎌倉仏教、禅

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