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和書フランス百科全書と技術学 - 「もの造り」の名誉回復と大革命

昨年、岩波文庫の『百科全書―序論および…

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昨年、岩波文庫の『百科全書―序論および代表項目』（ディドロ/ダランベール編）に魅せられた。（コメント参照）もう少し理解の裾野を広げたくて、「百科全書」をキイワードに紀伊國屋ウェブストアで関連図書を探していて見つけた一冊。
　表題の「と技術学」という表記が目を惹いた。購入してから気づいたのは、筆頭著者（本書は研究者夫婦の共著）は、工学部治金学科の卒業だ。電電公社（現NTT）の研究所勤務の後、業界誌の編集にも携わっている。安易な分類は嫌いだが、所謂「理工系」と「文系」の二足の草鞋を履いてきた著述家である。
　技術畑からの付加的な視点を添えて、有名な『フランス百科全書』に含まれる「技術学」の要素を浮き彫りにしている。本来、利便性の具現化としてしか注目されない「技術」の社会的意義を、知を追及する営みの中で、再確認する試みである。
　岩波文庫版が教科書の目次だとすると、本書は、視野を広げるための参考書と位置付けられる。原著である百科全書全巻を揃えて読むことはあきらめているが、本書は、原典への間接的な接近方法を示してくれている。
　装丁もその趣旨を反映している。参考文献の一覧も見やすく整理され、索引の充実度は模範と言ってもいい。例えば、一か所だけの小さな参考情報としての言及である『蟹工船』も、漏れなく索引に記載がある。専門分野の辞典編纂当時の真摯さがみてとれる編集となっている。
　書棚での岩波文庫と本書（A5判・高さ　22cm）の並びは不釣り合いだが、引用された名画「ポンパドール侯爵夫人の肖像」にさりげなく描かれた並んだ書籍の高低差と相似することが心地よい。
　さらに妄想を膨らませていくと、錬金術のために収集された異なった鉱石の陳列に見えてくるのである。ヴンダーカンマー（驚異の部屋）づくりには欠かせない高低差になった。

タグ百科全書、技術学、冶金

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