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和書独身者機械 - 新訳

この本の独創性、奥深さ、そして眩さは簡…

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この本の独創性、奥深さ、そして眩さは簡単には表現できない。帯にある前翻訳者の一人である高山宏の「異様絢爛の機械幻想に肉薄」の宣伝文句が本書の魅力を包含してはいるものの、紐解けば、迷路のようで幾何学的な構成の重厚性を十分には伝えていないことが分かる。
　高山宏が手掛けた旧版の邦題は『独身者の機械』（ありな書房）だった。この翻訳は1991年の出版で、入手できなくなって久しい。高山宏の『世紀末異貌』（三省堂）には、本書の価値が記述されており、どうしても読みたい本だった。
　今回、検索の結果、新訳の『独身者機械』として入手できることが分かり（2014年３月刊行）、購入した次第。著者のミシェル・カルージュが取り上げた作家は、カフカ、ジャリ、アポリネール、ヴェルヌ、リラダン、そしてポー等である。筆者の視点は、これらの作品の背景にある精神や欲望を支配する「機械」に注目し、一般的な文学評論家ではできない作家の想像力を動かすシステムを浮き彫りにしていく。シュルレアリスムの枠組みも再考する機会となった。
　巻末には、「独身者機械を含む主要作品の年代暫定リスト」があり、読了の作品も、再読の際の新たな視点が与えられることになった。これは大きな収穫だ。
　また、翻訳者の解説はこの謎の研究者と原典のより深い理解に極めて有効である。索引と文献一覧も丁寧に編集されているので、今後は掲載された図版を堪能すると同時に、参考書として頻繁に手にとることになるだろう。
　なお、この蠱惑的な表題からある作家が脳裏に浮かんだ。ルイス・キャロルだ。ヴィクトリア朝の機械化の産物である「写真機」に自らの愛欲を封じ込めたとおぼしきこの孤独な数学者の諸作品が本書から漏れているのは納得いかないが、本書を読み進める最中に、活字の向こうにアリスが手招きしている姿を垣間見た。

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