読書という航海の本棚＞構造主義、知の再構築 - 紀伊國屋書店ウェブストア｜オンライン書店

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和書構造と力 - 記号論を超えて

本書は、簡単に言うと、20世紀に起こっ…

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本書は、簡単に言うと、20世紀に起こった知の枠組みの再構築を理解するための読書案内だ。ただし、平面的な案内ではないので、見通しのよいショッピングモールでの散策のような気軽さはない。
　同じような比喩を用いると、この本の別名は「浅田百貨店」となる。ロンドンのハロッズよろしく、壁で仕切られた売り場では、閉塞感を感じることになる。しかも、エスカレータもエレヴェーターもないので、歩くことを強いられる。
　カタカナ表記の舶来品の陳列が目をひくが、時々、それらの背後から顔を出す和物。小さいながらも、無視できない存在感が感じられる。隣の売り場の様子は足を踏み入れないと見当がつかない。店舗全体の見取り図はなく、店員の商品説明も生産者からの押し売りの代弁のように響く。
　例えば、「ラカン」の売り場はどこかと「メルロ＝ポンティ」担当の店員に尋ねると「この建物にはない。別館だろう」というような返答がある。そこで、このあやふやな情報をもとに別館への経路をさがし始めるのだが、館内に案内はない。階の上下も含め、ひたすら歩かなければならない。その途中で「レヴィ＝ストロース」の有名な商品≪浮遊するシニフィアン≫はこちらというような小さな矢印が目に入るのだ。その方向への通路は円環している。
　いざ買い物をしようとすると、マルクスのクレジットカードしか使えないことが分かり、申込に必要な膨大な利用規約を見せられるし、商品の選択に際しては、フロイト・クリニックで無意識の機能についての講義をうけることを勧められる。
　この百貨店は、パノプティコン（牢獄）だったのだ。クラインの壺と言ってもよい。迷い込んだ客は、知の資材の消費者になるための苦しみに悶絶することになる。
　しかし、途方に暮れることもあるまい。著者の助言のようにヤジウマ的に本と付き合えばよいのである。
　用意周到な読書計画ではなく、偶然としての出会いよる購入と読みを続ければいいだろう。死ぬころまでには、書棚と意識を結ぶリゾームが形成され、自分自身の知の書庫が完成するはずだ。
　ただし、忘れてはいけないのは、女性専用の売場への関心だ。この視点については、上野千鶴子ファッション館へ足を運ぼう。下着売場は必見のようだから。

タグ構造主義、知の再構築

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