読書という航海の本棚＞哲学、自然、人間、機械 - 紀伊國屋書店ウェブストア｜オンライン書店

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和書自然の哲学史講談社選書メチエ

もどかしく狂おしい一冊。複雑であること…

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もどかしく狂おしい一冊。複雑であることを承知しつつ、極めて日常語である「自然」という事象への思索が、これほどまでに深くまた一様でないことを思い知らされ、「人間」の生物としての立ち位置を再考する機会を課せられた。単純に言うと、人は自然の一部なのかあるいはそれと対峙する異物なのかということである。
　本書では、その問いに対する哲学者の葛藤が歴史的に解説されている。読解が遅々として進まなかったのは、記述内容の再確認や復習が多く、また、対象の哲学者自身の著述や参考文献からの引用が多かったからである。
　前者については、章が変わり異なった論点が呈示されても、前述の確認のために頁を遡る必要もなく理解への一助となった。導くような丁寧な筆致で、私のような初学者でも、時間はかかったが、読了することができた。
　後者については、冒頭の『冬物語』（シェイクスピア）が論点の整理の舞台として有効だったり、後半では、記述量は少ないが、『エレホン』（サミュエル・バトラー）も議論の背景として紹介されていたりして、哲学と文学の曖昧な境界線の危さを垣間見るという悦楽もあったが、論述の多くは、著者の専門であるフランス哲学を中心した仏語の学術書に立脚している。負担になった部分もあったが、他の西洋哲学入門書では言及されないような思想家も複数含まれていて刺激的な発見にもなった。
　最後の方で、ドゥルーズとの比較の中で登場するシモンドンがその一人。ここで、自然対人間の構図に「技術」という新たな要素が割り込んでくる。言い換えると「機械論」という視点である。「機械圏」としての自然という表現からは、幾何学的なからくりに隠された艶を感じた次第だ。
　結びでは、「哲学が練り上げるべきなのは、・・・都市と街路―そこにある何よりも人工的なものも含め―においてである」（ドゥルーズ）とある。類推すると、未来に向かって「人工知能」や「ロボット」も「哲学者」を悩ますことになるのだろう。
　其れはさておき、私はこの「街路」に触発され、この正月には、本書では取り上げていないベンヤミンを読むことにした。もちろん、『パサージュ論』（岩波文庫５分冊）である。

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