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和書知の旅は終わらない - 僕が３万冊を読み１００冊を書いて考えてきたこと文春新書

実は、本書が刊行された2020年１月に…

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実は、本書が刊行された2020年１月に最寄りの店舗で購入するつもりで「かご」に入れたが、必要性の高い他の書籍を買うため、予算の都合上、その時はあきらめた記憶がある。しかしながら、著者が亡くなったことを知り、「追悼」の気持ちもこめて購入した。
　簡単に言えば、自伝である。幼少期から青年期にかけての回顧は、太平洋戦争開始から学生運動に揺れた戦後日本の現代史の目撃談でもある。歴史の参考書を読むよりは、実体験にもとづく記述は、はるかに臨場感があり、またジャーナリストの視線から説得力溢れる内容になっている。駆け足の筆致だが、奥が深い。
　著者の執筆に対する姿勢については、丁寧な取材という印象があったものの、『立花隆の書棚』（中央公論社）等から、圧倒的な量の読書によっている裏打ちされていると思い込んでいた。ところが、今回の読書で発見したことは、著者の行動力の勢いと活動範囲の広さであった。現場に足を運ぶ以上に、専門家や関係者と直接会って、情報を得たり、意見交換をしたりして理解を深めていく様は、表題の「知の旅」そのものである。
　残念ながら、知の巨人の探求は終わってしまった。年齢に差はあるものの、終活をまじめに考える時期になった今、自分自身の「旅」の終わりを満面の笑みで迎えるための指南書にもなった。脳死、安楽死、臨死体験等にも客観的に向き合ってきた著者の真摯な態度に諭される。2015年刊行の『死はこわくない』（文春文庫）は、「ほしいものリスト」に入れた。
　一つ残念なことは、巻末で、死ぬ前に完成させたい本の一冊として『形而上学』に言及し、「はじめの20行くらいはすでに書いてある」と、最後の仕事への意欲を紹介してくれてはいたが、出版というところまでは至らなかったのではないかということだ。
　それでも、学問の将来へ貴重な助言は残してくれた。つまり「形而上学(metaphysics)」を理解するには、その下にある物理学(physics)を学ばなければならないということだ。帯に印字された「総合知」の一例である。

タグ人生、知、形而上学

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