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和書フェルメール生涯と全作品 - 技法解説・作品背景・拡大図版で多角的に鑑賞！ＴＪ　ＭＯＯＫ

フェルメールとの出会いは、一冊の小説を…

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フェルメールとの出会いは、一冊の小説を手にとった時だ。フランス人作家の『レースを編む女』（パスカル・レネ、早川書房）。1977年３月12日に、経営者は変わったが今でもある渋谷の古書店で購入し３月19日に読み終えて記録がある。小説以上に印象に残ったのが表紙を飾る絵だった。絵と表題に魅了されて購入した記憶がある。当時は、フェルメールのことは全く知らなかった。
　それ以降、『新潮美術文庫13』を購入するなどして、フェルメールの作品を眺めるようになった。物語ではなく、装丁画に一目ぼれしたのだ。2011年の５月には、Bunkamuraへ《地理学者》を見に行き、その時の入場券を栞として使っている。
　本書は、表紙にあるように修復された《窓辺で手紙を読む女》の公開に合わせ出版されたガイドブック。残念ながら、2018年の上野での「フェルメール展」の機会を逸したように、今回も（今は予約制）、足を運べそうにない。私のような人のために、付録として、絵葉書５枚を用意してくれたのだろう。展示場と売店を楽しむ雰囲気が味わえる。
　あきらめかけていたオランダのデルフト観光を再考しながら、静かな自室で、フェルメールの生涯を振り返り、繰り返し全作品を堪能している。先日読み終えたEyewitnessing　(コメント参照)でも考察された《デルフトの家の中の庭》の雰囲気は、この目で直に見たいものである。　
　学生時代から変わらぬフェルメールが描いた絵画にたいする私の印象は、画中の人物や表情以上に、閉ざされた部屋とか路地に漂う淡い光だ。啓蒙の17世紀。10年遅れて生まれたニュートンが研究した物理現象としての光の分散を、この画家は芸術家の眼差しで描いたのだ。
　名前の日本語表記も、英語読み（Vermeer）の響きとは異なり、この印象を柔らかく包んでくれるようだ。暗い世相のなかにいても、温もりに癒される。
　フェルメールが描いた光は静謐によく溶け込んでいる。

タグフェルメール、デルフト、光

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