【紀伊國屋書店出版部】6月新刊『塗りつぶされた町――ヴィクトリア期英国のスラムに生きる』
19世紀末、統計学者チャールズ・ブースが所得階層別に色分けされたロンドンの地図を作成する。そこで最下層が多く住むスラムとしてひときわ黒々と塗りつぶされたのがイースト・エンドはニコル地区だった。まもなく、すさまじい貧困のなか6000人が暮らす、広さ約0.06平方キロほどのこのスラムの住人たちに不当な高値で極小の部屋を貸していたのが、実は政治家や聖職者、貴族たちであったことが明らかになる──
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繁栄のきわみにあった大英帝国の首都に巣くうこの不条理と、やがて「ゆりかごから墓場まで」と呼ばれる福祉制度が萌芽するまでを、注目の歴史家がつぶさに描いた王立文学協会オンダーチェ賞候補作。
貧困、格差、失業問題、既得権益にしがみつく特権階級、DV、児童虐待、予防接種の強制に対する反発、優生学の流行、移民排斥、公的福祉のあり方の検討......
都市型スラムの原型はここにあった