内容説明
過ぎてゆく四季の折々に自然の輝きをとらえ、愛する人を想いながら、人びとはその心を凝縮された表現にこめてうたい続けてきた。「日本詩歌の常識づくり」を目ざす著者は、俳句・短歌から漢詩・現代詩に至るまで、日本人の心のふるさとともいうべき言葉の宝庫から秀作を選び、その豊かな光沢と香りを鑑賞する。朝日新聞連載一年分に加筆。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nobi
71
昭和54年の朝日新聞に連載された詩歌の紹介解説。それも朝刊の1面に載せるという画期的な試み。350程の詩歌を続けて読んでゆくのは楽しくもあり時に重くもあった。古事記万葉集から江戸明治大正、敗戦、今日まで季節折々の歌。あはれをかし、生死の自然の、鋭く緊まったゆとりに遊ぶ…。圧倒的に多いのはいずれも前者。早逝の歌人が多いこともあるか。言い表せないはずの悲しみ虚しさからも“うた”が生み出される。歴史が積み重なりまた次々と切り拓かれる。大岡の解説(新書では200字)は、それらの“うた”と拮抗するほどに緊密で豊か。2020/11/05
浅葱@
51
新聞一面に毎日載るコラム「折々のうた」。詩歌一つに短い解説を毎朝楽しみにしていたのを思い出した。初購入の新書かも。コラム200字の詩歌鑑賞は、私の読書の幅や言葉への感性をずいぶん広げてくれた。何年ぶりかで読むと懐かしさもあり、今の自分だから選ぶ詩歌もあり。やはり愛読書ならではの味わい。「ものの種子(たね)にぎればいのちひしめける」「虹自身時間はありと思ひけり」「せつせつと眼まで濡らして髪洗う」などなど頁が折ってあり。今日は「六月の氷菓一盞の別れかな」「瀧の上に水現れて落ちにけり」頁は折りません(笑)2014/07/15
かふ
24
新聞を取らなくなってしまったからこういう日本の詩歌を知ることも少なくなってしまった。新書版はバックに入れて暇な空き時間に読むようにしていた。春夏秋冬季節ごとに本文と作者の解説も入れて210文字。ジャンル分けしてないほうが(最近俳句だけのとか出たけど)多様な表現に出会えるのでいい。日もめくりでカレンダーにしたら売れると思う。2019/12/30
Mayu
16
なぜ日本の詩は歌というのかな、と常々思っていましたが、この本の冒頭数ページでこれらは音楽なんだということがわかったような気持ち。言葉そのものの響きを楽しむという点だけでなく、想起されるイメージを共有する点で。一度見たことがある歌は忘れているようでも、また出会うと再会だとわかるところも似てるような。和歌に限らず、俳句や漢詩もとりあげられていて、興味はあるけどどこから手をつけて良いかわからない私のような読者の入門編としてとても良いなと思いました。お上品すぎるという批判もあるようですが、やはり古今集好きだなぁ。2020/02/21
テイネハイランド
16
図書館本。前から読みたいと思っていた詩歌アンソロジーの第1集。気にいった詩歌が色々見つかり読んでいてとても楽しめました。おもいつくままに好きな句をあげれば、春「春雨や降るともしらず牛の目に 小西来山」夏「ゆるやかに着てひとと逢ふ蛍の夜 桂信子」秋「やはらかに人わけゆくや勝角力 高井几董」冬「斧入れて香に驚くや冬木立 与謝蕪村」。もちろん、俳句(発句)以外にもいい歌がたくさん収められています。2018/08/16