内容説明
「困った。もう、■■■■■■が真犯人としか思えない」
青崎有吾(ミステリ作家、『地雷グリコ』)
「テクストを読者の方へ開く思い切りのよさにおいて、バイヤールを凌ぐ批評家はいない」
郷原佳以(東京大学教授、本書解説より)
犯人の意外性によってミステリ史に燦然と輝くアガサ・クリスティー『アクロイド殺し』。だが名探偵の推理は正しいのか? 見過ごされてきた証言や二重の意味をもつ言葉、読者を惑わせる仕掛けをつぶさに検証。そこから導かれるのは、まさかの真犯人だった!
先入観を捨て再読すると、新たな物語が出現する。
『読んでない本について堂々と語る』著者ピエール・バイヤールが、読むことの創造性を鮮やかに示す文学批評。
目次
登場人物
序
A 捜 査
第Ⅰ章 殺 人
第Ⅱ章 捜 査
第Ⅲ章 ヴァン・ダインの法則
第Ⅳ章 黙っているのも嘘のうち
B 反捜査
第Ⅰ章 終りなき夜
第Ⅱ章 嘘つきのパラドックス
第Ⅲ章 ここが変だ
第Ⅳ章 理想的な殺人犯
C 妄 想
第Ⅰ章 道の交わるところ
第Ⅱ章 妄想とは何か
第Ⅲ章 妄想と理論
第Ⅳ章 妄想と批評
D 真 実
第Ⅰ章 カーテン
第Ⅱ章 真 実
第Ⅲ章 真実のみを
第Ⅳ章 そしてすべての真実を
訳者あとがき
文庫版あとがき
解説/郷原佳以
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
とも
33
名作『アクロイド殺し』を、精神分析的な観点から捉え直し、別の犯人をあぶり出していく一冊。原典の構造解説、読み解きが素晴らしく、理解が深まる。 注意は、他作のトリックやネタバレが多数登場すること。著者による真相だけなら「D 真実」以降を読めばよく『カーテン』以外のネタバレは出てこない。 で、肝心の真犯人については…もうそうとしか思えない。さらに「精神分析の教えにしたがうと…」と語られる箇所は「!」。 教授の高度すぎる手遊びを満喫できました。2026/09/21
geshi
24
文学教授による『アクロイド殺し』の読み解き。探偵が辿り着いた真相の真実性は何者にも担保されない後期クイーン問題への言及や、フロイト論・精神分析論を用いて理論と妄想が入り組んだ主観的真実性しか存在しないと論証する、けっこうガッツリした文学論で、使われている言葉も一部難しかった。元々の犯人を示す推理の穴を突き、『真実』で示される真犯人の名は妙に説得力があって原作好きとしては困ってしまう。こんな風に先入観なく本を読んでテキストを自由に解釈していいんだと、読者の枷を外す一助となる一冊。2026/09/14
春風
7
刊行100周年を経たという『アクロイド殺し』。そんなこととは露知らず先日読んだばかりであったので、それらのネタバレが豊富に含まれることを構わずに読んでみる。推理小説を閉じられたテクストとしてではなく、読者が読むことで介入して新解釈してもよい、真犯人を指弾してもよい、という読みを目指した文学批評。本書でも実例として、テクストの決定不可能性を指摘してアクロイド殺しの真犯人を挙げている。ロラン・バルトのいう「作者の死」を後継・発展させているといった感。ただ理論は納得できても、実例部がやや弱いとも感じてしまった。2026/09/22
駒場
4
『アクロイド殺し』でも用いられる読者を騙すミステリーの方法、偽装・転嫁・露出は、事件解明段階に至るまで、多様な読解を読者に提案し続ける。と言うことは、「この多様性は意味決定が不可能な状態を生み出してしまう」のでは!?一人称物語はストーリーに対する一つの視点を提供するだけだからだ。実はシェパード医師以外に正体を隠し通した”真犯人”がいる!テクストの解釈者は、いまだ知られざる意味を創出できるのだ!言われてみればそうかも、の連続で、テクストの自由な読み方にわくわくしっぱなし。ミステリーこそ、再読せよということだ2026/09/30
読書熊
4
探偵ミステリーさえ、読み方は無限2026/09/09




