内容説明
心身を壊し勤めていた会社を辞めた青年・千秋は、祖父がかつて谷中で営んでいた中華料理屋「春夏冬軒」跡を間借りし移り住んだものの、生きる気力が湧かず、食べ物を義務的に口に押し込むだけの日々が続いていた。ある雨の夜、傷だらけの怪しい男・小虎が現れ、料理をするかわりに泊めて欲しいと頼み込んでくる。彼が作る炒飯は、千秋が幼い頃に「春夏冬軒」で食べた思い出の味そのものだった。「おいしい」という感情を取り戻した千秋は、小虎を雇い入れ、ふたりでかつての「春夏冬軒」のような町中華を始めるべく奮闘するが!? 居場所探しも生きる意味も、まずはお腹いっぱいになってから。巨大食品会社の子息×野良中華料理人青年が東京下町で繰り広げる、おいしくてちょっとほろ苦い口福人情譚。
目次
一 炒飯/二 糖葫蘆/三 生煎饅頭/四 炒飯ふたたび/五 水餃子
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
よっち
23
心身を壊して谷中にある祖父が中華料理屋跡に移り住んだ島崎千秋。彼が怪しい青年・小虎とお店を復活させようと奮闘する口福人情譚。生きる気力に乏しい千秋の食欲を刺激する、小虎が作った懐かしい味がする炒飯。千秋が小虎を雇い入れ、2人で町中華を始めるべく奔走する展開で、千秋の実家との確執や訳ありっぽい小虎の事情、元カノの再会から千秋の秘密も浮き彫りになる一方で、小虎に振り回されながらひとつひとつ不器用に向き合って、乗り越える中で育まれていく確かな絆があって、2人が作り上げたかけがえのない居場所が印象的な物語でした。2026/08/19
金吾庄左ェ門
12
どことなく無気力な千秋が蔣喜虎こと小虎と出会いその料理の腕に触れる事で、生きて行く事の意義を取り戻していくという感じの話ですが、おいしい中華料理の話は良しとしても、二人の周囲との関係がギスギスしているのが難でした。小虎も料理の腕以外はつかみどころがなさすぎる感じがしました。店の名前である春夏冬(あきなし)軒の由来はとてもいい話だと思います。2026/08/28
冬野
10
初読み作者さん。あらすじは町中華の経営に奮闘するお仕事もの…のようだが実際はだいぶ違う印象で、より深く多くの要素を内包した物語だった。序盤の千秋状態だった時期があるので心から共感。調理シーンが音や匂いまで伝わってきて、ここを魅力的に書ける方は本当にすごい。表紙扉絵も含めてどの料理も美味しそう(特に生煎饅頭)。終盤の展開はやや駆け足にも感じたが、兄弟にも似た関係が築かれる過程が良かった。クィア当事者には少しキツい部分があるので若干注意かも。※集英社オレンジ文庫の先読み感想CPに参加しています。星:4.5/52026/08/25
フロッグ
5
中華料理が次々出てきてお腹を鳴らしながら読了。後半は何とも深い話になったけどおもしろかった。2026/09/07
いち
4
作中で次々と作られる中華料理がどれもおいしそうで、でも食べたことがない料理がほとんどだったので、是非食べてみたい。大きな中華鍋でさっと作られる熱々の料理とは真逆に、千秋が会社を辞めるに至った経緯や、小虎が春夏冬軒に辿り着いた事情はすぐに解決できるものではない部分はあれど、いつか「なんとかなった」って二人が思える日が来ることを願う。千秋は、小虎くらい真逆な性格の人と猫の世話で忙しいくらいが、前を向いて暮らしていけるのでちょうどいいのかもしれない。 *集英社オレンジ文庫の先読み感想CPに参加しています。2026/08/22




