岩波新書<br> ヒトとAI

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岩波新書
ヒトとAI

  • 著者名:岡野原大輔【著】
  • 価格 ¥1,034(本体¥940)
  • 岩波書店(2026/07発売)
  • ポイント 9pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004321224

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内容説明

AIと共に生きるうえで,私たちは自己の再定義と社会の再設計を迫られている.AIが知の領域に組み込まれるなかで,仕事や教育のあり方はどのように変化し,経済や文化の枠組みはいかに再編されるのか.そしてヒトという存在の何が変わり,何が変わらないのか.ポストAI時代の見取り図を第一人者が提示する.

目次

はじめに

第Ⅰ部 ヒト以外の知能

第1章 学習する計算機
 学習する計算機と、説明できなくなった人間
 理解する前に答えがある世界へ

第2章 学習とは何か
 模倣する学習から、試行錯誤する学習へ
 なぜ人は「理解していないもの」に従うのか
 わからないものに判断を委ねるとはどういうことか
 理解を前提とした判断の限界
  コラム 学習の三つの基本形

第3章 AIは断片的な世界で学習する
 断片的な学習がもたらす強さ
 連続性を持たない学習の限界
 AIは表面的にしかわかっていない
 世界の厚みを持った人の学習
  コラム 大規模言語モデルの学習

第4章 AIは継続学習が苦手
 分散表現が生む「記憶の干渉」
 破滅的忘却
 AIは忘れながら覚え直している
 反復によって成立する学習

第5章 なぜヒトは少ない経験から学べるのか
 生存戦略としての「その場学習」
 多次元的で高密度な学習
 記憶の固定化と干渉の回避
 抽象化という圧縮装置

第6章 抽象化の力と副作用
 カテゴリ化
 因果を見出したいという欲求
 抽象化や因果推論が生む誤りと迷信
 抽象化と偏見
 人とAIの抽象化の違い
 抽象化は知能の加速装置であり、不安定化要因でもある

第7章 究極の抽象化である言語
 個人を超える学習
 曖昧さの強さ
 離散化とコピー可能性
 無限の表現力
 AIが言語を扱うということ
 さまざまな情報をつなぐハブとしての言語

第8章 AIは理解しているか
 言語の理解と世界の理解
 理解を構成する五つの観点
 AIは五つの理解をすでに高い水準で実現している
  コラム 文脈内学習

第Ⅱ部 ヒトの知能――AIとの対比からみる特徴

第9章 個別性と多様性――同じ世界でも、異なる世界にいる
 評価軸の違いからの個別性
 多様性は探索のための設計原理である
 AIとの対比――評価軸の固定という制約

第10章 文化――個人を超えて学ぶ仕組み
 文化がもたらす集団学習
 評価軸の外部化
 文化を持たないAIとの対比

第11章 死と有限性――不可逆な有限性が知能を形づくる
 不可逆性が選択を生む
 死と集団の学習
 AIとの構造的な違い

第12章 感情――学習を駆動する内的報酬
 感情の起源――身体状態のモニタリングから社会的評価へ
 感情は経験に重みを与える
 内的報酬としての感情
 感情と個別性
 AIは感情を持ちうるか

第13章 自由と責任――選択を引き受ける主体
 主体なき選択は自由ではない
 不可逆性としての自由と責任
 AIはなぜ自由ではないのか
 自由と責任の再定義

第14章 意識と自己――「私」はどこに宿るのか
 自己モデル――行動を「自分のもの」にする短期記憶
 目標――行動に方向を与える軸
 内省能力と主観経験
 AIはどこまで主体か
 社会的主体と責任の所在

第Ⅲ部 ポストAIの社会――制度・経済・責任

第15章 責任は誰のものか
 責任が生じる三つの条件
 「主体があるように見える」ことの危うさ
 AIにおける責任のズレ
 責任はどこに置かれるのか
 責任を個人に還元しないために

第16章 仕事の再設計――AIが業務に溶け込んでいく
 変化は連続的に、まず仕事の内部から起きる
 エージェントとハーネス
 文化という巨大なハーネス
 仕事は部分的に、構造から自動化される
 実行は分散し、判断は集約される
 監査可能性と責任の所在
 新規事業に見る人間の役割

第17章 ポストAI時代の業務(1)――指揮と統合
 指揮という仕事
 統合という仕事
 統合と経営判断の関係

第18章 ポストAI時代の業務(2)――監査・変更・停止
 監査とは何か
 変更という介入
 変更に伴う責任
 停止という不可逆な境界を引く判断
 設計として引き受けられる責任

第19章 コミュニケーションの再設計――交渉が並列化し、委譲が制度になる
 会話の高速化から、合意形成の構造化へ
 代理交渉と専門性の外部化
 委譲が制度になるということ
 日常生活へ浸透するエージェント交渉
 注意と責任の再配分としてのコミュニケーション

第20章 言語の再発明
 自然言語が前提としてきた人間同士の了解
 自然言語の第一の制約――一次元の流れ
 曖昧さという緩衝材の限界
 第二の言語層
 自然言語を補ってきた人工言語の延長として
 AIにとって自然言語は特別ではない

第21章 教育の更新
 地図を持たぬ者に、ナビは使いこなせない
 学習の個別最適化の功罪
 問いを立てる力と学びの主体性
 教師・学校・学びの場の役割の変化
  コラム 試験はどうなるのか?

第22章 研究開発の逆転
 理解なき発見の常態化
 整理する者から意味づける者へ
 神託への接近

第23章 神託としてのAIと科学研究
 納得と制御の分離
 神託としてのAI
 理解から検証へ――神託の飼いならし方
 制度としての責任

第24章 エージェント社会とRTS
 エージェント社会とは何か
 RTSゲーム
 人間は「司令部」という位置に現れる
 エージェント社会の構造
 拡張するエージェント社会

第25章 引き返せない選択としての創造性
 「終わらせる」という特権
 責任という名の創造性

第26章 なぜ外国語を学ぶのか
 翻訳できることと、外国語がわかることは違う
 言語を学ぶとは、生成規則を覚えることではない
 内面化された生成空間としての言語
 生成を手放したあとに残るもの

第27章 数十億のAIエージェントが経済活動を担うとき――主体・契約・市場の再編
 法人とAIエージェントは何が違うのか
 契約は自動化できても、責任は自動化できない
 エージェント市場が生む新しい不安定性
 人間に残る役割――主体を設計するという仕事

第28章 AIを社会に組み込むための設計原理
 内部からの逸脱――制御不能のリスク
 外部からの武器化――悪用のリスク
 社会実装のための三つの設計原理
 権利は感情ではなく制度である

 おわりに――AIと共に変わるヒト

 参考図書
 あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

読特

53
文の一部を切り出し、次に来る言葉を予測させる、幾度も幾度も。連続した物語ではなく、断片から学ぶ。ヒトのように振る舞うが、ヒトではない。感情のようなものを実装できるが、何かを感じているわけではない。判断しても、責任を伴わない。とんでもないことをそれっぽく語る。間違っても痛みに苦しむことはない。失敗が人生に刻まれることはない。何度でもやり直せる。たくさんの可能性を提示できる。いつまでも考え続けられる。止めるのはヒト。選ぶのもヒト。…ポストAI時代。どう働くか、どう生きるか。もう火のない時に戻ることはできない。2026/09/25

Book & Travel

33
ここ数年で日常の仕事の中にAIが急速に浸透してきたが、その恩恵を受けつつも、人の育成や仕事の組立の面でモヤモヤする所があった。本書ではAIの第一人者である著者によって、AIの現状や本質、これからの人とAIの関係等が、詳しく冷静な筆致で述べられており、腑に落ちる内容が多かった。AIには当事者性や文化がなく、それゆえに人の責任が重くなる点、多数の良さそうな選択肢の中から1つを引き受ける「統合」の作業が様々な階層で求められるという点等が、特に興味深かった。仕事そのものについて考えさせられる一方で、人とAIとの→2026/09/15

よっち

26
AIが知の領域に組み込まれる時代。仕事・教育・経済・文化がどう変化し、ヒトという存在の何が変わって何が変わらないのかを、技術的な仕組みから社会制度まで体系的に論じる1冊。AIの学習の仕組みを解説して断片的なデータ処理や継続学習の苦手さ、理解の限界を明らかにし、AIに欠けているものからヒトとは何かを浮き彫りにしていて、仕事の再設計や教育の更新、責任の所在を誰が引き受けるかAIが判断しても、それを固定し続ける主体にはなれないという指摘は重要なポイントで、人間の有限性や責任を再確認するきっかけになる1冊でした。2026/08/26

タカナとダイアローグ

22
安野さん、西垣通さんへの関心から、現時点最先端の知見がある著者を探していてたどり着いた。200ページで簡潔に重要な議論を提示しており、必読だよ、と主張したい! とくに、AIが提示したことに対して、人間が引き受けるのは責任。不可逆な結果を有限性のある人間が引き受けること。重要なのは胆力。 「なんだか分からないけどすごいもの」がみつかったとき、人間が分析、理解、許容するには数年〜かかる。ブラックボックスだけどすごいものを、どうやって社会に組み込んでいくか。統合、監査、停止。AIエージェントとの協働とは‥2026/08/30

ossan12345

17
著者は哲学的素養もある方なのでしょうか?独特の言い回し。人は死と有限性の制約のなかで、自分が引き受ける人生を前提に判断を行う、この判断は不可逆的であり、仮に間違ってもその履歴の蓄積がそのまま人生を形成する。これが世代を超えて継続されるとき、それは文化となり、外部化される。このなかで生きる我々人間は選択を引き受ける責任を負う。対してAIはどうか。人間には理解できない処理を同時並行に進め、出された結果はほとんど神託と化す、人智を超えるエージェントに対して、我々はどのように人としての判断を下せるのだろうか。2026/08/23

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