内容説明
戦乱の室町時代、瀬戸内の美しい海と島々を背景に、羅綾の蚊帳の由縁とともに絢爛たる伝奇絵巻が開かれる。播州の太守赤松家と代官浦上家の確執に端を発し、両家の侍が京を駆け巡る狂騒の美女捜し。御家騒動には室の港に君臨する遊女かげろう御前、幻術を駆使して民を翻弄する幻阿彌法師、果ては一切を謎に包みし海龍王までが運命の糸を縺れさせる――史実や伝説をまじえ文豪が悠揚たる筆致で読者を誘う、永遠に終わることなき物語の愉楽。奔放な想像力が築く谷崎文学の隠れた山嶺が、ここに姿を現す。/解説=東雅夫
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
スリルショー
3
谷崎潤一郎の珍しい伝奇小説で未完だが、かなり面白い。時代は、室町時代末期、瀬戸内の室を中心に絶世の美人遊女、太守、代官、家中の家臣、海賊などが繰り広げる伝奇絵巻。どんでん返しもさることながら、エロあり、ラブロマンスあり、任侠あり、また播磨を中心とする古跡、食物、衣装など和歌も絡めて谷崎が古典の造詣深いところを余すところなく、荘厳な文章として発揮している。2026/08/11
栄吉
2
★★☆☆☆ 今まで読んでいた谷崎潤一郎のイメージと違い、読み終えた後にその後は!前編?面白くなってきた所で…。2026/10/10
氷沼
2
谷崎潤一郎の娯楽伝奇小説。 我らの東京創元社からの刊行案内で初めて知った一冊。室町時代末期の瀬戸内を舞台に、伝説の遊女に海賊、大名やその臣下の武士、怪しげな奇術師などが、大谷崎の奇想のままに縦横無尽に動き回る愛すべき物語。 惜しむらくは、未完であること。なんと、前編で終わってしまう。あの後、胡蝶さんの運命がどうなるのかがとても知りたい。 因みに、澁澤龍彦が好きな作品である。2026/09/02
kumabook
1
内容紹介には「永遠に終わることなき物語の愉楽」とある。これは谷崎による通俗的で娯楽的な物語のひたすらに尽きることなき面白さを比喩しているだけでなく、この物語が本当に物理的に終わっていないことを言っている。この本で350ページほどの前編だけがあって、後編は書かれることがなかった。でも実際、前編のみでもかなり面白い。「春琴抄」や「痴人の愛」なんかを谷崎らしさというならば、この小説に谷崎らしさはない。あくまでも異色作、娯楽伝奇小説である。二人侍の段なんかは町田康が頭に浮かんでくるような笑劇ものになっていた。2026/09/18




