たった一人の読者を生きる

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たった一人の読者を生きる

  • 著者名:荒井裕樹
  • 価格 ¥1,980(本体¥1,800)
  • 柏書房(2026/05発売)
  • 澄みわたる秋空!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント30倍キャンペーン(~11/8)
  • ポイント 540pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784760156597

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内容説明

もう誰にも動員させられたくない。
この心は私のもの。あなたのもの。

【内容】
例えば、「世界で自分だけしか読んでいないかもしれない物語」に出会ったとき、「こんなマイナーな作品について書いたり語ったりしても無意味だよな……」と思うか、「自分が書かなければ/語らなければこの作品は存在しなかったことになってしまう」と思うかは、それぞれだと思います。

もし、あなたが後者の側に立つとして、いざ何か書き残そうとしても、そういう些細で、身近で、時に儚い出会いのエピソードは、論文のようなかっちりした形式には馴染まなかったりするものです。だから本書では「エッセイ」、それも「おしゃべり」するような言葉づかいで、少なくない読者がきっと抱いたことがあるであろう「この物語をなかったことにしたくない」というあの感覚に、迫ってみたいと思うのです。

“ここで私が話したいのは、もっと小さくて、些細で、身近で、時には儚いものについてなんです。(中略)世界的なマスターピースよりも、親しい人の打ち明け話のほうが大事になってしまったり、友だちが出したぜんぜん売れない自主制作本のほうにより感動してしまったり、なんてことは、誰にでも、多かれ少なかれ、あると思うんです。/これって、実はすごいことなんじゃないですかね。自分の心だけを打つものがこの世界に瞬間的に誕生しているというか、どうしようもなく自分の心を打つものがどうしようもないくらい自分以外の人に知られてないっていうか、そんな現象が発生しているということなので。/この現象、取り立てて研究なんてされないですけど、けっこう大事なものだと思うんです、人間にとって。/なんというか、人って自分でも気が付かないうちに、たった一人の読者を生きている瞬間があると思うんです。”(「はじめに」)

こちらの感情や心を動員するための言葉や映像が氾濫する社会の潮流に、気づかぬうちに呑み込まれてしまわぬように、自分にとって本当に大切な「物語」について語ること、そのための居場所をつくること。そうやって大切な領域を守ることができてはじめて、私たちはきっと、ほかの誰かが大切にする「物語」のことも大切にできるのではないでしょうか。

“自分にとって本当に大事なものって何なんだろうとか、本当に自分の心を打つものって何なんだろうとか、自分はどういう物事に魂を揺さぶられる人間なんだろうとか、そういう自分の領域を大事にして、誰かに、勝手に、いつの間にか心を動員させられないようにすることはできる。そう思うんですよね。/これから少しだけ、私の「たった一人の読者」体験を聞いてください。私の密かな「物語」との思い出話をさせてください。そんな「物語」が居られる場所を作るために、少しだけ力を貸してください。で、もしよかったら、そのあと、あなたの話も聞かせてください。”(「はじめに」)

ロングセラー『まとまらない言葉を生きる』を著した「声の小さな文学者」が新たに綴るのは、これまで語られてこなかった「たった一人の読者を生きる」という経験について。小さな「自分」を守ることで、誰かとつながる12の内緒話。

目次

はじめに――一つの「物語」が居られるところ
「そのむごい人間が自分なんだ」
「川はいつもにごっている」
「日々の谷間に疲れてよりかかるイス」
読めない手紙
「女はすべて美しい」
愛読書にまつわる怖い話
言葉の網目で個を包む
無精卵の哀しみ
素がこぼれる
障害者について考えるのは誰の仕事か
「絶版」にさえなれない
大切な人の大切なものを大切にする
おわりに――欲しいのは語り続けるあきらめの悪さ
あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

ネギっ子gen

59
【世の中、小さな声でしか語れないものもありますよね……】「おわりに」で“欲しいのは語り続けるあきらめの悪さ”と書く著者が、心打たれた物語への思いを綴る書。<文学者としての私が心打たれてきたのは、伝統や経緯や商業的な人気といったものとは縁がなかったり、遠ざけられたりしてきた「物語」でした。ハンセン病療養所の中で綴られた詩。孤独な在宅障害者たちが作った雑誌。精神科病院の一室で描かれた絵。/駆け出しの研究者だった頃は、「どうすればこうしたマイナーな研究素材で論文が書けるか」ということばかり考えていました>と。⇒2026/10/21

さちこ

41
講義を受けているような感覚の訳があとがきで明かされた。知らなかった世界を学べた。納得出来たかは別としても。2026/06/09

Kanako

17
著者は文学研究者だが、対象とするのは著名作家ではなく、無名の障害を持つ方々が生み出した文学作品である。それらの作品は基本的に日の目を見ることがない。彼ら彼女らの豊かな文学世界の奥に隠れた、複雑な心情を静かに共有してもらっているような読書体験でした。たとえ読者がたった一人でも、文学が持つ力というものはとても力強いものなのだと感じた。2026/08/20

どら猫さとっち

10
「まとまらない言葉を生きる」から5年、“小さな声の文学者”が語りかける、誰も知らない「物語」の話。障害者と社会のつながりは、何故こんなに困難だろうか。そして、社会から強いられる苦しみとつらさ。そこから文章が文学が生まれる。その人たちの言葉は、確実に私たちに語りかける。でも、私たちは素通りする。そんな言葉に立ち止まって聞いて受け止めること。それが本書の役目ではないだろうか。市川沙央「ハンチバック」の言及もいい。2026/09/12

たこらった

3
…あんなに身近にいた人なのに、その生きざまを目に焼き付けようと心ひそかに誓っていた人なのに、その人が赤飯のおにぎりを食べる理由さえ、私は深く知ろうとしてなかったんですよね。「大切な人の大切なものを大切にする」 The baby made a conversational sound and her mother said, “That’s a leaf. A leaf off a tree. Leaf,” and gave it into the baby’s hand. And the sun... .2026/09/07

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