内容説明
私はこの世界の出口を見つけなくてはならない――。女性を主人公にした初の長編小説。「正直いって、君みたいな醜い相手は初めてだよ」 26歳の絵本作家、夏帆は初対面の男にいきなりこう告げられた。とびきり美しくも賢くもなく、ただ少しばかり好奇心の強い彼女は、怒りよりもショックよりも、ただ純粋に驚いた。しかしそれから彼女の周りでは、実にさまざまな奇妙な出来事が起こりはじめる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅう
146
あえてジャンル分けするなら、本作はファンタジーということになるのだろうか。主人公は絵本作家であり、作中には絵本そのものも登場する。そのことから、私はこの小説自体が一編の絵本、あるいは寓話として書かれているように感じた。そう考えると、アリクイを善、ジャガーを悪として単純化した描き方にも一応の理解は示せる。しかしその一方で、これまでの村上春樹作品に顕著だった、物語の奥行きや善悪では割り切れない人間の複雑さが薄れ、作品全体の深みがやや損なわれてしまったようにも感じた。そして、ミソラの絵本に描かれる→2026/07/06
あすなろ@no book, no life.
131
物事や人には二面性があって、それは少しだけファンタジックで非現実的な世界かもしれない。否、リアルの延長線上ではないか、という村上氏作品の本質王道を往く作品だと感じた。そして割とそれがシンプルで分かり易いかと。そしてラストの白蟻が抜け出た母親の台詞にあるが、ねぇ、みんなそうしていつかは居なくなってしまうのよ、と言わせる。女性主人公は初だとの事だが、春樹氏が生の終末を描いてみたというか暗にそうなってきている感も全域で感じながら春樹文学新作を読了したのである。両面の表と裏、その等価性。それらが印象に残った。2026/07/05
おしゃべりメガネ
91
やはり春樹さんに対する猛烈な読書熱には抗えず1日で読了です。完全無欠のハルキワールドはもちろん健在で、読む側としては理解みたいなモノは決して追求するものではないなと。春樹さん作品にして、どうやら初となる女性主人公「夏帆」は絵本作家さん。そんな彼女がしっかりとハルキワールドへと誘ってくれます。毎回、主人公の相棒とも言うべきキャラが登場しますが、今回は「アリクイ」です。読み進めていくうちにどんどんあり得ない展開になっていきますが、まるで呪文をかけられたように頁を捲る手が止まらなくなるのが春樹さんならでは。2026/07/04
新田新一
80
26歳の女性の絵本作家が主人公の物語です。夏帆は自分の母親が何者かに乗っ取られていることに気づき、母を救い出すために思い切った行動を取ります。読みやすくて、物語自体も面白い素晴らしい小説です。人間の言葉を話すアリクイやシロアリが出てくるので童話的な雰囲気があります。物語の中にも夏帆が書く童話が出てきます。アリクイやシロアリは何かの暗喩なのかもしれません。でも、私はそれは考えずに、ひたすら物語の中に没入して、夢中になって読みました。作者は物語の力を信じています。そのことが感動的です。(コメント欄へ続きます)2026/07/11
アキ
77
村上春樹の新刊。「武蔵堺のありくい」だけは雑誌で読んでいて、どんな展開になるか期待していましたが、いつものムラカミワールドでした。主人公の夏帆が絵本の物語を作中で作りながら、夏帆の物語とシンクロさせて、最後にハッピーエンドで終わりました。めでたしめでたし。親との対決や和解というテーマは、父親を亡くした息子としての心残りを反映させたなのでしょうか?ありくいとジャガーと白アリの女王のいるアマゾンの世界は、身近に来てもらいたくないですね。医師の父親は、死ぬまで医師としての役割のままなのでしょう。一気に読了。2026/07/11
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