内容説明
夫を喪くし、人生を終おうという歳。
妻でも母でも祖母でもなく、
老いた今こそ「自分」を咲かせる
高杉晋作と同じ目の高さでこの国の行く末を見つめた、たったひとりのおなご――
野村望東尼(ぼうとうに)を活写する傑作時代長編!
「わしら同志じゃけぇな。同志ん中でも、最上の同志じゃけぇ」
開国から維新へと向かう幕末の動乱機。
筑前福岡藩士の夫を見送ったモトは、出家し「望東尼」という名を授かる。
不甲斐ない息子を案じ、嫁にたしなめられつつも、夫の遺志を携え、大坂、京都に和歌の師を訪ねる旅に出たモト。
勤王の志士と語らい、内にある政(まつりごと)への熱を呼び覚まされたモトに、やがて運命を大きく変える
高杉晋作との出会いが訪れる。
きみがなき あとよりかれし秋草は 生きかへりきて 花さへぞさく
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
111
木内さんの最新作で、エンターテイメント系ではなくある女性の生涯を追ったものです。幕末の福岡のある藩の武士の妻が夫を失い尼となるものの、そこに志を抱いた若い武士などとの交流が描かれます。その中には高杉晋作などがいたりして大坂などにも行ったりします。あくまでこの女性が中心でその子どや孫あるいは嫁などとのやり取りのほうが中心となっている感じです。2026/05/06
buchipanda3
84
人生の終わりが見えたからと言って型通りに納める必要はないのだなと。身勝手と思われても自分に正直にしなやかに生きるのは「面白きこと」なのだ。歌人であった野村望東尼はそのように生きた。ゆえに同じ覚悟をした幕末の志士達と心を通わせられたのだと思う。彼女が勤王家となったのは五十半ばで夫を喪くした後。穏やかな余生より、時勢と彼らへの好奇の心は止められず、幾度も煩悶しながらも己を消さぬ想いが彼女を立たせ、書かせ、詠ませた。高杉晋作との波瀾は辛くも面白き。モト以外の女性達も時代を生き、その存在感に著者の眼差しを感じた。2026/06/05
天の川
63
高杉晋作の辞世の歌「面白きこともなき世を面白く」に「棲みなすものは心なりけり」と下の句をつけたと言われる勤王派を支援した野村望東尼の後半生を描く、ガッツリ歴史小説。元福岡藩士の妻だったモトが夫を亡くし剃髪した後に、偶然にも足を踏み入れてしまった幕末の混沌。流刑地から高杉の指示で脱出する場面に胸が躍る。彼女は永らえたが、有為の若者が次々に斃れていくのが苦しい。攘夷を決行しながらも5人の若者を密留学させ世界情勢を知ろうとする長州のように、結局、強かな戦略を持ったものが勝機をつかむのだなと改めて感じた。→2026/05/21
シャコタンブルー
51
妻であり母であったモトが野村望東尼になる経緯が興味深い。高齢で出家しながらも、幕末の激動の渦に巻き込まれて高杉晋作と出会ったのは宿命だろうか。動と静、太陽と月、雷電と小雨のように対照的な二人が同志として互いを尊重していく。「面白きこともなく世を面白く 棲なすものは心なりけり」二人の心の有り様がこの歌に色濃く現れている。タネ、おうの、雅等の女たちは日々の生活と現実に汲々とし藻掻き抗って生きていく。それは女たちの「世に棲む日々」でもあったかも知れない。2026/06/06
信兵衛
20
幕末の尊王攘夷、幕府転覆という激動の時代を、福岡藩という限られた世界からではあっても、一人の女性という視点でみた幕末史という意味で貴重なものに感じます。 そしてもうひとつ、深い感銘を受けるのは、女性としての生き方という問題が、モトに関わる様々な女性の姿を通して浮かび上がってくることです。 地味な歴史作品ですけど、作品に籠められた想いは深いものがあると感じます。お薦め!2026/05/31




