内容説明
夫を喪くし、人生を終おうという歳。
妻でも母でも祖母でもなく、
老いた今こそ「自分」を咲かせる
高杉晋作と同じ目の高さでこの国の行く末を見つめた、たったひとりのおなご――
野村望東尼(ぼうとうに)を活写する傑作時代長編!
「わしら同志じゃけぇな。同志ん中でも、最上の同志じゃけぇ」
開国から維新へと向かう幕末の動乱機。
筑前福岡藩士の夫を見送ったモトは、出家し「望東尼」という名を授かる。
不甲斐ない息子を案じ、嫁にたしなめられつつも、夫の遺志を携え、大坂、京都に和歌の師を訪ねる旅に出たモト。
勤王の志士と語らい、内にある政(まつりごと)への熱を呼び覚まされたモトに、やがて運命を大きく変える
高杉晋作との出会いが訪れる。
きみがなき あとよりかれし秋草は 生きかへりきて 花さへぞさく
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
121
木内さんの最新作で、エンターテイメント系ではなくある女性の生涯を追ったものです。幕末の福岡のある藩の武士の妻が夫を失い尼となるものの、そこに志を抱いた若い武士などとの交流が描かれます。その中には高杉晋作などがいたりして大坂などにも行ったりします。あくまでこの女性が中心でその子どや孫あるいは嫁などとのやり取りのほうが中心となっている感じです。2026/05/06
たま
103
野村望東尼を中心に据え彼女の視点から幕末の動乱を描く。夫も子たちも亡くし出家したモトが京に旅し、脱藩の筑前福岡藩士平野と会い、想像力共感力を動かされ、志士たちと関わる。目まぐるしく変化する政局、それに翻弄される男たちを追いかけつつ、老境にある女としてのモトの内面、嫁のタネとの交流は「老女」「嫁姑」のステレオタイプからほど遠く、きめ細やかなリアリティに心を動かされた。大きな歴史の流れ、有名人物たちの周囲でどれだけ多くの人々が翻弄されつつその人生を生きていたか。この作品は木内さんの傑作、一つの頂点と思った。2026/07/17
buchipanda3
97
人生の終わりが見えたからと言って型通りに納める必要はないのだなと。身勝手と思われても自分に正直にしなやかに生きるのは「面白きこと」なのだ。歌人であった野村望東尼はそのように生きた。ゆえに同じ覚悟をした幕末の志士達と心を通わせられたのだと思う。彼女が勤王家となったのは五十半ばで夫を喪くした後。穏やかな余生より、時勢と彼らへの好奇の心は止められず、幾度も煩悶しながらも己を消さぬ想いが彼女を立たせ、書かせ、詠ませた。高杉晋作との波瀾は辛くも面白き。モト以外の女性達も時代を生き、その存在感に著者の眼差しを感じた。2026/06/05
ネギっ子gen
80
【「面白きこともなき世を面白く 棲みなすものは心なりけり」(晋作の辞世の句に、下の句を望東尼が)】福岡藩士の夫に先立たれたモトは出家し、望東尼という名を授かる。勤王の志士と語らい、政に目覚めたモトは村岡局や高杉晋作に出会い――。巻末に参考文献。モトの述懐。「(悔いが)なかて言やあ嘘(すらごと)になる。ただ、平尾でつつがのう暮らしとっても悔いは残った気がするとたい。その悔いにうちゃ蓋ばしたやろう。これが己の人生やったとばい。身の丈ん暮らしばまっとうしたっちゃけん、これでよかとたい、と己に言い聞かせて」と。⇒2026/08/08
たいぱぱ
78
流石、木内昇!福岡藩士の夫を亡くした妻の余生の心情を描いた作品なのか、と全く予備知識なしで読み始めたのですが…えっ!いっ!あっ!という間に幕末の動乱に飲み込まれてました。福岡藩からみた幕末は新鮮だったし、高杉晋作の事も勉強になりました。何より全く知らなかった望東尼という歌人の生き様にこれからの自分の生き方のヒントをもらえた気がします。妻でもなく、母でもないところに自分の生き方がある。望東尼の濁りなき眼でみるテロリストと言っても過言ではない志士たちの魅力、高杉の妻や妾にも平等に優しさを分け与える姿勢に感服!2026/07/16
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