内容説明
日本人はなぜ「日本人論」が好きなのか? そこには西欧文明との遭遇によるアイデンティティの危機がある。この問題を出発点に、天皇と外来文化という二つの「権威」の交差と、それを「空気」として受け止める独自の社会構造から、日本人の無意識に作用する「見えざる原則」を探究する。渾身のシリーズ第一弾!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
112
日本は名誉を担う権威(天皇)と実力を握る権力(武家)の分離した時代が、どちらにも逆らわねば支障なかったため7百年近く続いた。明治維新で両者は統合されたが、西洋文明が新たな権威として入ってくると神が併存する形となった。帝国主義に対応せねばならない明治政府は「和魂洋才」などと繕いながら近代化を強行したが、そうした同調圧力が共同体内の空気を生んだ。絶対的権威のない日本では空気が権威化し、秩序を乱さないのが楽なため絶対化へと進んでしまった。伝統と近代化の並立が生んだジレンマに、日本人の精神構造は未だ囚われている。2026/10/04
tamami
53
これまでの著者の本では、詳しい論点については理解不足を感じることが多かったが、本冊は終始明快な論が展開され、知的感興を覚える。戦後論壇に蝟集した進歩派知識人についての考察や、著者の目に映じた近代市民社会の実像など、面白く読む。後半は、山本七平の『空気の研究』を手掛かりに、戦前に日本独自の「空気」が醸成された仕組みを考察する。戦後は、「天皇陛下万歳」が「民主主義万歳」に代わっただけで、本質は変わらないと言う。近代史殊に明治維新の捉え方に、小林秀雄や柳田國男、保田与重郎などが引用され、自分でも確かめてみたい。2026/06/18




