内容説明
中国思想史上最大の著名人――孔子は、なぜ「世界三大聖人」の一人なのか?
中国の思想史を孔子から始めるのは、異論のないところだ。しかし、生前は自らの理想とする政治を実現できず、故郷の魯に帰り、失意のうちに生涯を閉じた一思想家が、後世、なぜ「神」のごとく崇められるまでに至ったのか?
本書は、孔子の思想が時代を経て日常の宗教・倫理として浸透していくまでのプロセスを、時代ごとの人物の果たした役割とその主要著書をもとにして解き明かしていくものだ。
【内容】
序 人が「神」になるとはどういうことか
一 孔子はもとから「神」の素養をもっていたのか
二 孔子の思想はなぜ「中華の背骨」となったのか
三 孔子の聖人化はいつから始まったのか
四 儒学はいかにして国家教学になったのか
五 儒学はなぜ「朱子学」「陽明学」を生んだのか
六 孔子は日本でどのように受容されたのか
七 孔子の教えはどこに向かうのか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
95
タイトルを見てアレっと思う。孔子は神だったの?儒教の「教」は宗教の教ではなく教学の教ではなかったの?と。この疑問こそ著者の思うツボだったのだと読み終わって納得する。中国における儒教の受容の歴史が紹介される:孔子・孟子・荀子の系譜、漢代の国家教学、韓愈の再興、宋代の朱子学・明代の陽明学の誕生、文化大革命での批林批孔など。現代の中国は、神どころか、孔子の寛恕の精神を失い、韓非子の法家の論理に染まっているように思える。なのに「孔子学院」をブランドとして、世界中に中国文化を宣伝する中国政府の強かさには畏れ入る。2026/06/26
とも
26
なぜ孔子は「神」として祀られるに至ったのか。 同時代に競合した諸子百家との違い、中華の国教へと上り詰めた経緯、日本における受容の歴史を紐解いていく。 近年になって大量の竹簡が発見され、新たにより詳細が見えてきたという。歴史とは固定されたものではなく、生きて変化していく学問であるんだな、と痛感させられる。 孔子と同様に神格化された、菅原道真や関羽のエピソードも興味深い。ただ「凄い人、尊敬される人」だけでは神格化されない、そこには悲劇の要素が必要と。神の作り方にも通じ面白い。2026/09/04
よっち
25
孔子の思想が死後いかに神格化され、信仰の対象となったのか、中国思想史の視点から丁寧に解き明かす1冊。生前は理想とする政治を実現できず、故郷の魯に帰り、失意のうちに生涯を閉じた孔子の思想を、弟子たちによる論語編纂を通じて教えが後世に伝えられ、漢代以降の儒教国家化、孔子廟の建立、祭祀の制度化、そして唐・宋代の廟号授与や明清期の至聖先師といった過程を史料を基に追い、道教や仏教の影響を受けつつ儒教独自の神格を獲得していった点、皇帝の親祭や地方での孔廟建立が、民衆レベルの信仰に繋がったことが伺えて興味深かったです。2026/03/21
電羊齋
12
孔子が「君子」、「聖人」そして「神」として神格化されていく過程をわかりやすく述べ、また孔子から近現代までの儒教史の概説ともなっている。また日本での儒教の受容についても述べられている。個人的に面白かったのは、近年の出土文献なども盛り込み、「君子」という言葉に含まれていた政治性を紹介しているところ。元々「君子」という言葉には人格者としての意味のみならず、現実の政治に直接関わることによって世界を正していくことのできる存在という意味があり、まさに孔子がその「君子」であると位置付けられていたことが紹介されている。2026/04/04
さとうしん
11
湯浅版『孔子神話』とも言うべき書。内容は当然浅野裕一の一連の書よりは穏当、かつ近年公表された出土文献絡みで新しい知見も盛り込まれている。本題の孔子が神として祀られた経緯のほか、広く儒教入門となっている。また日本の儒学受容についても言及されている。「孔子衣鏡」から見る孔子の「イコン」と神格化の話が面白い。2026/02/17
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