内容説明
宮内祐子はボーイズラブ小説を書き、オンラインで発表してきたアマチュア作家。還暦を過ぎ、定年を迎えた彼女に、ふと初めて「男女物」を書いてみたいという思いが兆した。自らの創作観、性愛観を振り返りながら、小説は書き進められていく。スリリングな構成、性愛の繊細さと読むこと=書くことの歓びに満ちた長篇小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
そうたそ
7
★★★☆☆ これまでBL小説を書いてきた六十代・独身女性のアマチュア作家が、老境を迎え、生まれて初めて異性愛の小説を書くことになり、考えるあれやこれや、回顧する自分の人生。そして執筆に向かっていく様が描かれる。創作日誌、というような内容で、淡々と創作観、性愛観のようなものが語られる。明確なストーリーらしきものを期待すると少し違うかもしれないが、一人の作家の頭の中を覗けるような作品でもある。著者のこれまでの作品と重ねるとまた更に感慨深いものがある。2026/04/03
rinakko
7
ふふ、面白かった。なるほど老境小説か…。主人公(日記の書き手)は60歳を過ぎた素人のBL小説書き。体力の衰えと共に願望や欲望が勢いをなくし、ゆえに自分に陶酔をもたらさないとわかっている男女の性愛を題材に小説を書いてみる気になった…という。ありふれた恋愛を描くのではなく、偏愛や奇妙なこだわりのようなもの、“愛とまでは行かなくとも愛の前駆体のような”おだやかな交わりについての小説を書こうとする思考と試行は、この作者ならではのものだ。登場人物たちの“難儀な性分”の描かれ方も、面倒臭そうで好ましかった。2026/04/02
uchiyama
5
正直なところ、他者に(ひいては自分にも)誠実に接してきたかどうか全然自信がないので、そこを問い詰めてくるようなこの作家の本は、所謂、共感の「刺さる」とかではなくて、読むとぐさぐさ刃物で刺されているような辛さが今まではありました。でもこの新作では、繊細で独特な、他者に対する感受性への厳しさと、個の嗜好への偽りのない探究はそのままに、老年期がもつ開かれた「許し」というのか、受容のようなものを感じて、痛みと同時に穏やかに心動かされる、稀有な体験をしました。俯瞰する軽やかさとユーモアもある、不思議な本です。2026/04/07
ジュリアン
0
松浦作品はずっと気になっていたものの、これがが初めてである。『親指P』も『葬儀の日』も『最愛の子ども』も『裏バージョン』も積読になっている。さて、タイトルからして考えさせられる。そう思って読み進めていくと、「今度は同性愛」ではないが、この作品は設定をそっくりひっくり返しても成立するように思われる。異性愛の相対化に成功しているのだ。松浦氏はクィア理論も、フェミニズムも満遍なく目を配っていただろうと思うが、昔から著者独特の何かが想像された。小難しいそれらやそれを借り物にした作品など及ばない強度がある。2026/04/06
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