内容説明
It’s automatic!?
誰かのためになる瞬間は、いつも偶然に、未来からやってくる。
東京工業大学で「利他プロジェクト」を立ち上げ、『利他とは何か』『料理と利他』などで刺激的な議論を展開する筆者、待望の単著!
今、「他者と共にあること」を問うすべての人へ。
自己責任論も、「共感」一辺倒も、さようなら。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
187
ジャック・アタリさんの「合理的利他主義」への懐疑からこの本は書かれている。親鸞の言う他力、ヒンディー語の与格的構造、与える利他ではなく受動的に発動する利他の時制、九鬼周造の偶然・邂逅などを考えることを通じて、「利他の本質」が明らかにされる。最近流行りの利他ではあるが、善意や支配や利己的なサバイバル術にしてはいけないという著者の強い思いが伝わってくる。私は中島さんの文章が好きだ。論理的には鋭く追求するが、常に、人としての優しさが伴っている。この本も、そんな中島さんのお人柄を感じることのできるいい一冊だった。2022/02/07
けんとまん1007
147
3年ほど前から、「利他」は自分の中で重要な言葉の一つ。今回、この本を読んで、やっとその意味の理解の入口に立ったように思う。利他は、発動するもの・・・オートマチックという視点が、納得できるものが多い。それと、時間軸の捉え方も、なるほどと思う。結果を思い描くのではなく、時間を置いて(未来に)結果的に何かが起こるということ。そして、与格という視点。その人の生き方が、如実に表れるのかもしれない。2022/02/18
ちゃちゃ
120
日々のあり方を考える上で示唆に富む好著だった。親鸞に多大な影響を受けた著者。「私が私であることの偶然性」を自覚することが他者への共感や寛容に繋がると説く。私たちが今ここにあることは、“思いがけず、たまたま”なのだ。“社会や他者のため”の貢献や自律は、利己的な欲望が含まれ我知らず支配関係を生む。さらに注目したのは、主格に対する“与格”という捉え方だ。“私が~する”のではなく、“私に~がやってくる”というヒンディー語文法の概念。利他は自己を超えたオートマティカルな力によってもたらされる。目から鱗の連続だった。2023/06/17
アキ
109
羽生結弦が恩師の言葉を胸に、4回転アクセルに挑んだことをインタビューで知る。これこそ本書での利他とは未来から贈与されるという実例ではないか。近代とは主格の時代だとしたら、ヒンディー語の与格のように、我々が失ってしまった「幻」と付き合い、身が動くことを大事にする。利他的な行為も、いつの間にかそれが支配的になることもあることを知り、相手に利他が発動する「受け取るとき」を待つしかない。それは自己責任などという、自己の偶然性を無視した考えを否定し、「今」の意味を未来から倒逆的に理解することに他ならない。2022/02/20
シナモン
104
利他であろうとするとき、そこに本当の利他は生まれない。利他とは「受け手」によって生まれるもの。日々精一杯生きて自分のすべきことを淡々と行う。その静かな繰り返し。そこに「思いがけず」の利他が生まれる。焼き物の「窯変」のたとえが沁みた。心に深く刺さる一冊だった。2024/12/23




