内容説明
徳川幕府は旧態を脱しきれずに薩長の志士によって倒され、明治の新政府は開明政策を推進して中央集権の統一国家を建設した――という日本近代の建国神話はどのようにして生み出されたのか。「討幕」と「開国」、「大政奉還」と「版籍奉還」など、名づけに込められた意味を踏まえて建国神話を解体し、十九世紀変革の真相をとらえなおす注目の書。
目次
誤解の契機はふたつ―プロローグ
慶応三年に何が起きたか
「討幕」とは?
徳川家の立場と扱い
大名をなくす
開国の真相
井伊直弼は「開国」論者ではない
天子統仁の攘夷
「攘夷」の正体
条約の勅許
版籍奉還こそ画期
版籍奉還と公議
大名家の解消と藩の設置
廃藩置県は人事異動
武士が消える
ある京都留守居の御一新
新潟県士族として
公債証書の交付
散るや万朶の桜花―エピローグ
あとがき
参考文献
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
128
どの国でも現政権が正統な統治者であると、国民に納得させるための建国神話を必要とする。大日本帝国にとっての神話が明治維新であり、それを前提とする歴史認識に基づく教育が行われてきた。敗戦による帝国崩壊後も神話は根強く残り、今日まで受け入れられている。特に従来は地味な存在だった版籍奉還こそ、維新の大きな画期であると断言する。大名家を廃止して家禄というベーシックインカムを与えて中央集権政府の基礎とし、仕上げに廃藩置県という人事異動で武士を消滅させたのだ。歴史の神話や誤解を剥がねば真実は見えてこないと教えてくれる。2026/05/18
kawa
35
「版籍奉還」「廃藩置県」などエポックな歴史政策の詳細が知れる良書。「版籍奉還」は、明治世になって大名家が朝廷直属の組織として「藩」に変化する端緒となった政策。従って、江戸時代を「幕藩体制」と説明する「藩」と言う用語は、厳密に言うと江戸時代には無かった由。「攘夷」の内実も、朝廷が求めていたのは通商条約を破棄し和親条約時までに戻して華夷秩序(日本の方が優れていると考えられる体制/これが「国体の維持」の定義らしい)を維持することを言う。さらに「明治維新」という用語も、じつは昭和初期に使われ始めたと説明。2026/02/23
MUNEKAZ
22
江戸時代に「藩」や「幕府」という呼び名は存在せず、後から付けられた歴史用語であるというのはそこそこ知られていると思うが、新政府の修史事業のフィルターを外した維新の実像はなかなか浸透していない。本書では数ある改革の中でも、中央集権国家建設の根幹たる版籍奉還と武家の解体にスポットを当てている。近世と近代の移行期故に、双方の時代に目配せした研究態度が必要というのはごもっとも。討幕ではなく、武家そのものの解体にまで及ぶと見通せた者が、当時どれほどいたのだろうか。2026/04/07
月をみるもの
13
まさにいまこそ、(武士に限らない)ベーシックインカム導入と中央集権解体(藩復活)という反明治維新運動を起こすべき時期だと確信した。2026/05/25
ozmaax
3
終わりに書かれているとおり、崩し字を読めなくては始まらないのだろう。原典にあたる重要さを知らしめてくれた。 明治維新を正当化する政府の政策や空気が今の歴史を作り上げてきたことを実感した。こう言う本を読みたい2026/04/08




