内容説明
大正十三年、宗教哲学者の柳宗悦が住む京都の家で女中奉公をはじめた少女サチ。ある日、河井寛次郎という陶芸家が柳家に来訪する。英国帰りの陶芸家・濱田庄司も同席し、男たちはすぐに意気投合した。彼らは共に小道具市を巡り、「下手物」すなわち日用の品に自由な美を見出し、それらを「民藝」と名付けた。薄汚れた古布や、埃にまみれた陶磁器に感嘆し、その美を世に提唱する三人の姿に驚かされるサチ。佳き品々に満ちた柳家での暮らしと、美を愛する人々との出会いを経て、彼女自身もやがて「民藝」に魅せられていく。百年前の京都で、新たな美「民藝」の世界を切り開いた人々の情熱と輝きの日々を描く歴史長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
125
女中奉公を始めたさち目線で物語は進む。民衆的工芸··用の美。私達の日常に在る生活美をあらためて思う。まかてさんの真骨頂を感じる本作。タイトルからして何❓️興が乗らなきゃリタイアかと思った私を恥じる次第。京都や柳家の暮らしを、ねいや·さちの思考や言動に同化して最後まで読んだ。特別な事は無い。だから安心して没頭出来る。日々の暮らしのなかにある何気なさを、私自身見直すきっかけになる気がした。ラストがまた好いんだなぁ。2026/01/10
天の川
58
柳宗悦の家の女中サチを通して見る京都時代の民藝運動。柳の著作の題字にあった「ぐろりあ・そさえて刊」をサチが”輝ける仲間たち”と解釈するが(実際は出版社名)、柳宗悦・河井寛次郎・濱田庄司らが日常の雑器に美を見出す才は正に。しかし、全国から買い集める膨大な雑器、多彩な活動に必要な財源は、柳の妻で声楽家の兼子が支えていた。天性の明るさで、家庭も仕事も全てを手放すことなくやり切る兼子にとても興味を持った。女中サチ目線は客観的ではあるものの、彼女が知り得ることには限界があるので、兼子目線で書いてほしかったなあと→2025/12/29
nyanco
31
2026年最初の一冊。出版社のHPを開くと”新たな美「民藝」の世界を切り開いた人々の情熱と輝きの日々を描く歴史長編” う~ん、史実ものはやや苦手だし、ボリュームもあるし読めるかなぁ。 柳家にねえやとして女中奉公をはじめた少女サチの目線で物語が進んでいきます。まかてさん、描写力がやっぱり凄い。柳家のしつらえ、皿や家具、そして料理、まるで映画を見るかのように目の前にその風景が広がっていき、ぐいぐいと物語に引き込まれました。サチを語り手にしていることでとても読みやすい →続2026/01/01
マカロニ マカロン
20
個人の感想です:B。民藝運動の柳宗悦氏の家に仕えた「ねえや」サチの目で、関東大震災以降京都に移転した柳家の日常が昭和初期まで語られる。サチは女学校出で頭もよく、機転も利き柳家で重用されるが、彼女の秘めた恋心は伏線回収されることはない。宗悦氏は審美眼は確かであるが、一切金に頓着せず、名品とみれば蒐集する。その払いは妻の兼子が切り盛りする。兼子さんは後に「日本声楽の母」と呼ばれる美声と技巧の持ち主。本作では兼子さんの素晴らしい人柄と昭和初期の民藝運動の揺籃期を知ることができたが、小説としては今ひとつに感じた2026/01/04
ryohjin
19
関東大震災後の京都時代の柳宗悦とその家族の様子を、女中サチの視点で描いています。河井寛次郎、濱田庄司という生涯の仲間と交流し、民藝運動が立ち上がっていく一方で、家計を顧みない柳宗悦に対して、音楽家の道との間で葛藤しつつ家庭を支える兼子夫人の姿が印象的に描かれます。時に対立しながらも、柳宗悦の「古き佳きものを、新しい価値を見いだす」夢を尊重し、自らも声楽家として大成した兼子夫人の人としての大きさに敬服しました。サチも含めた登場人物がそろう最終章に感動し、いい話を読ませてもらったなと思いました。2025/12/28




