内容説明
大正十三年、宗教哲学者の柳宗悦が住む京都の家で女中奉公をはじめた少女サチ。ある日、河井寛次郎という陶芸家が柳家に来訪する。英国帰りの陶芸家・濱田庄司も同席し、男たちはすぐに意気投合した。彼らは共に小道具市を巡り、「下手物」すなわち日用の品に自由な美を見出し、それらを「民藝」と名付けた。薄汚れた古布や、埃にまみれた陶磁器に感嘆し、その美を世に提唱する三人の姿に驚かされるサチ。佳き品々に満ちた柳家での暮らしと、美を愛する人々との出会いを経て、彼女自身もやがて「民藝」に魅せられていく。百年前の京都で、新たな美「民藝」の世界を切り開いた人々の情熱と輝きの日々を描く歴史長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
旅するランナー
178
柳宗悦家の女中サチさん目線で描かれる、民藝の美の世界。陶芸家河井寛次郎・濱田庄司との活動、アルト歌手でもある妻の活躍。確かな情熱と鋭い感性を持つクセ強な輝ける仲間たち。彼女と共に、傍らからその初志貫徹な姿を見届けることができます。佳き小説。2026/05/09
いつでも母さん
164
女中奉公を始めたさち目線で物語は進む。民衆的工芸··用の美。私達の日常に在る生活美をあらためて思う。まかてさんの真骨頂を感じる本作。タイトルからして何❓️興が乗らなきゃリタイアかと思った私を恥じる次第。京都や柳家の暮らしを、ねいや·さちの思考や言動に同化して最後まで読んだ。特別な事は無い。だから安心して没頭出来る。日々の暮らしのなかにある何気なさを、私自身見直すきっかけになる気がした。ラストがまた好いんだなぁ。2026/01/10
星群
97
勉強不足で、彼ら3人のこと知りませんでした。読み終わった後、Wikipediaで3人と兼子さんを調べました。この一冊が〝民藝〟の世界を知るきっかけとなりました。〝ねえや〟のサチの視点で日々が巡る丁寧な暮らしが心地よかったです。ばあやが私的には楽しい人でした。口にお寿司を詰め込んで頬ばるリスみたいな姿を可愛いと思いました。2026/03/29
ひさか
90
野性時代2024年4月号〜2025年3月号掲載のものに加筆修正し、2025年12月角川書店刊。来訪者、朝市、ラムール、民藝、五条坂、日常の美、ベルリン、仲間たち、霧の中、野薔薇、坂道、の11の章で構成。柳宗悦の家で、ねえやをする主人公のサチが魅力的。ばあや、大ばあや、奥様たちもいきいきとしている。史実と創作の融合が楽しい。ラストのサチの身上が明らかになるところは盛り過ぎの感もするが、面白みがあって楽しい。2026/02/28
ちゃちゃ
84
サチよ、あなたこそが日常に埋もれた佳き人なのだ…。「民藝」運動に携わった男たちを描くため、視点人物としての役割だけではない。作者はサチという女性の生きざまに、名もなき雑器の美を映し出したのではないか。柳家の有能な女中として、控えめで愚痴をこぼさず、気働きがきき、それなりの教養もある。本作でもまかてさんの描く女性は生き生きとした輝きを放ち魅力的だ。志高く日本の芸術界を牽引しようとする男たちは、どこかアンバランスで脆い(特に柳宗悦)。これは、軽妙な筆致で描かれた「グロリアソサエテ(輝ける仲間たち)」の物語だ。2026/04/22




