内容説明
私たちはとんでもないところまできてしまったのではないか……。文政二年、薩摩藩士らを乗せた船は暴風雨に襲われ、漂着したのは朝鮮国だった。使者とのやりとりは漢文での筆談のみ。官僚との交渉は遅々として進まない。それでも「言葉は通じない。だが真心は通じる」のも真実だった。望郷の念がかなうのはいつの日なのか?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
138
町田 康は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。本書は、著者版朝鮮漂流、漢文書簡歴史譚でした。しかし江戸時代での厚遇、史実でしょうか❓ https://www.shinchosha.co.jp/book/421504/2026/02/10
パトラッシュ
137
映画『メッセージ』をはじめ地球人と異星人の意思疎通の難しさがテーマのSFは数あるが、本書も似たようなものか。手軽に旅行できる今日でも外国の常識や考え方との落差に驚くが、外国人との交際など皆無な江戸時代の武士には異世界に漂着したようなものなのだから。ほぼ9割を占める朝鮮側から帰国への支援を引き出そうとする薩摩藩士の交渉描写は、話の通じぬ相手と話さざるを得ない苦闘が身にしみる。現代でも露骨な自国第一主義の米中ロと交渉する外交官は、同様な労苦を感じているのかも。その意味でサバイバル外交小説と称せるかもしれない。2026/02/15
そうたそ
10
★★★☆☆ 船が難破し朝鮮国に漂着した薩摩藩士たち。言葉が通じず、意思疎通の手段は漢文のみという中で、彼らは祖国に帰ることは叶うのか――。薩摩藩士・安田義方が記した「朝鮮漂流日記」をベースとして書かれた大作。読む前は「ギケイキ」みたいな語り口になるのかな、と思っていたが、読んでみれば実直な歴史小説。もちろん著者ならではのユーモアが垣間見える部分もあるが、総じて原典に忠実。言語が異なる中でいかにコミュニケーションを取っていくのかという面白さもあるし、一種のサバイバル小説としても面白い。2026/02/27
GO-FEET
7
◆時は文化十四年(1817年) ◆主人公は薩摩藩士・安田義方、沖永良部島代官附役、三十歳 ◆実際に漢文で書かれた日記を元に、町田康がフィクションとして創作したものらしいが、これまでの「義経記」や「古事記」や「太平記」の翻訳物とは少々と毛色が異なっている ◆いつもの町田節が今回はかなり控え目! ◆それよりも、当時の下級武士(?)がいかに官僚として優れていたか、責任感が強かったか、しかも武芸にも秀でていたりなんかして、ちょっとそこは感動的! というのが正直な感想⋯⋯ ◆で、少々長いのが玉に瑕⋯⋯ 2026/03/25
takao
6
江戸時代武士の矜持をとてもよく表した作品でした。常に薩摩という国ひいては日本国を代表している意識が高く漂着した身でありながら朝鮮役人との駆け引きには一歩も引かず必要なことは堂々と主張、要求する。昨今の腰抜け外交に終始するどこかの国の政治家とは格段の差である。これがまだ30代の年齢であるということに驚いた。また、言葉が通じないため全てを漢語での筆談となっているがこれもどのような交渉をしたか、自身に疾しいところがないことを証明する証となっている。公的記録を改竄、破棄するどこかの役人とは大違いである。2026/03/21




