運び屋として生きる:モロッコ・スペイン領セウタの国家管理下の「密輸」

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運び屋として生きる:モロッコ・スペイン領セウタの国家管理下の「密輸」

  • 著者名:石灘早紀【著】
  • 価格 ¥2,772(本体¥2,520)
  • 白水社(2025/12発売)
  • ポイント 25pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784560092781

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内容説明

合法でも違法でもない「密輸」の実態

モロッコ北部には、セウタととメリリャという二つのスペイン領(飛び地)がある。このうちセウタの国境地帯では、1990年代から2020年ごろまで、周辺に住むモロッコ人による「密輸」が行われていた。

密輸というと違法薬物の取引や密漁、はたまた国境をまたいだ人身売買といったおどろおどろしいイメージを抱きがちだが、本書のテーマである「密輸」は、モロッコへの商業輸入に対して通常課される関税を逃れているものの、スペイン・モロッコ当局から容認・管理されている越境貿易の一種である。この「密輸」はセウタからモロッコに食料品や衣料品を運ぶものであり、最盛期にはおよそ40万人がかかわっていたとされる。

本書では、「密輸」を生んだ諸問題に目を配りながら、女性主体の運び屋をはじめとする従事者(パトロン、卸商など)の暮らしを中心に「密輸」がどのような営みであったのかを、実地調査とインタビューをもとに詳細に描いていく。インフォーマル経済、国境、ジェンダーに関するこれまでの研究とも接続し、「密輸」という現象を生み出した社会的構造について明らかにした力作。立命館大学教授・小川さやか氏推薦!

[目次]
 はじめに
序章 「密輸」を研究する
第一章 二人の王様にとっての爆弾
 アフリカ大陸のヨーロッパ
 歴史的背景
 例外状態にあるセウタ
 移民の経由地
 「モロッコはテロリスト輸出国」
 鍵を握る西サハラ問題
 「外交カード」と飛び地領
第二章 容認された「密輸」
 「密輸」の始まり
 組織化された「密輸」
 運び屋とは誰か
 なぜ容認されているのか
 「密輸」の弊害
第三章 管理するスペイン
 「密輸」の問題化
 「密輸」専用通路の設置
 スペインによる規制強化
 「重ね着密輸」の本格化
第四章 「密輸」に依存する町
 セウタ
 フニデクの「密輸」品スーク
 カサブランカの闇スーク
 メリリャとナドール
第五章 根絶をめざすモロッコ
 根絶に向けての舵取り
 窒息するセウタ
 運び屋の生存戦略
 コロナ以降の国境
終章 運び屋として生きること
 あとがき
 注/参考文献/調査対象者一覧

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

111
密輸は犯罪との観念が確立している日本人は、国家が管理する密輸という国際政治の奇形児を理解できるか。モロッコにシミのように貼りついたスペイン領の飛び地があればこそ、密輸による経済圏が生まれ双方で多くの人を養ってきた。何もない砂漠の辺境に国境線が引かれたために密輸産業が栄え、互いに経済的利益を得ている実態を両国は黙認したのだ。特に途上国モロッコでは女性や少数民族など弱者の生きる手段となり、運び屋として当局と攻防を続けてきた。モロッコが密輸根絶に乗り出した今、生存権すら脅かされる彼らはどうやって生きていくのか。2024/05/17

どんぐり

77
ジブラルタル海峡をはさんだモロッコにあるスペインの飛び地「セウタ」。ズボンや下着を何枚も重ね着し、重い荷物(梱)を腰を曲げて運ぶ女性たち。その多くがバルバラ人の貧困女性で、日常用品を税関を介さずにモロッコに持ち込む。スペインとモロッコの二国間で黙認・容認されてきた密輸だ。インフォーマル経済の一種として、密輸が多くの人々の生活の糧となり、国家をも巻き込み、地域にとっての一大産業にまでに発展してきた(コロナ禍以降は規制がかかる)。→2024/10/16

kan

29
モロッコにスペインの飛び地が複数あることを恥ずかしながら知らなかったし、当地で衣料品等の「密輸」がインフォーマル経済として双方に利益があるため当局に黙認され、運び屋専用の通路まで国境に設置されていることも知らなかった。「必要悪」の背景にある両国の思惑に乗じた賄賂や暴力の横行と、女性がいつも弱い立場に置かれ尊厳も生命も失われるのは世の常だ。歴史、移民、女性、少数民族、経済など複数視点の丁寧な取材に基づく労作。面白いという表現は不適切だが、アフリカとヨーロッパの境目にある本音と建前、矛盾や格差を伝える良書。2024/07/13

ばんだねいっぺい

24
運び屋労働の実態に迫るルポ。まずもって、冒頭のインフォーマル経済の統計に固唾を飲んだ。ここでも一番の弱者が危険な末端労働に組み込まれ搾取されている現実がある。2024/11/02

ハルト

12
読了:◎ 「運び屋」として生きる以外、他に方法がなかった。そんな、主にモロッコ人女性たちの生き様を追いながら、モロッコとスペイン領セウタという地域の関係をも辿る。彼ら彼女らにとって「運び屋」という越境的商売というのは、インフォーマル経済によって成り立っているものだった。そして国の暗黙の了解下で細々としていた「運び屋」は、コロナ禍によって完全に終止符を打たれてしまう。貧困層の弱者たちにとってそれは死活問題であり、小さな世界の崩壊でもある。世界の構造の不条理さを垣間見せてくれる一冊だった。2026/01/06

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