内容説明
寿退社後に婚約破棄されたアツコが、行く当てもなく乗り込んだ路線バスの終点で見たもの。学級閉鎖で留守番中のアタル君が巻き込まれた不可思議な事件。自殺同然の事故で兄を亡くした妹が、偶然出会った女子中学生。俳句から着想を得て生まれた物語は、十七音の枠を超え、色彩豊かな無限の世界へ広がってゆく。人生の機微を掬い取るように描く、怖くて、切なくて、涙を誘う、極上の短編集。(解説・倉阪鬼一郎)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
bunmei
128
一瞬の情景や心情を切り取った、17音の俳句からイメージを広げ、宮部流の解釈で、様々な立場に置かれた人々の心の襞に寄り添って思いを掬い取っていく作品。久々に現代社会を舞台に、ミステリーからSF、ホラー、社会派ドラマと幅広いバリエーションが楽しめ、著者の新たなる挑戦が伺える12編からなる短編集。穏やかな筆致の中にも、生き方への後押しとも、警鐘ともとれる作風に、切なさや怖さ、哀しさ、そして愛情が感じ取れ、心に語り掛けてくる12の物語。最後に綴られているそれぞれの俳句に込められた意味が、深く染み渡っていく。2026/02/13
Major
112
句会から紡いだ12の短編集。十七音の余白から、日常に潜む人間の業や狂気を鮮やかに炙り出す。不妊の抑圧に苦しむ妻が、大寒に実る怪異(禁断)のゴーヤを口にすることで、当事者意識の薄い夫とのすれ違いを超えて「赤ちゃんがほしい」と本音を口に出す。夫との間に和解が生まれた『窓際のゴーヤカーテン』。一方、理不尽な婚約破棄に再生へのギリギリの心の闘い、「呆れ果てる」アツコ。バス旅の果ての向日葵の枯野に「あたしは帰るよ」と声を掛け、新しい命と共に歩き出す『枯れ向日葵』他。読後も妖しい余韻が胸に残り続ける、珠玉の短編集だ。2026/07/29
エドワード
98
宮部みゆき×俳句。おおっ、獄門島か!と思えばさにあらず。彼女のカラオケ好き仲間が俳句を嗜み、できた作品に想を得て書かれた十二の短編だ。ボケ防止のカラオケゆえ、宮部さんと同世代つまり私も同じ。散見するテーマは青春とは程遠く、病、葬式、野辺送り(映画でしか見たことないです)、墓参り、〇回忌と苦笑いしかない。俳句自体に人生の深い趣きが感じられ、物語も人の喜怒哀楽や情愛にあふれている。「異国より訪れし婿墓洗う」からは初期宮部さんのSFタッチに懐かしさを感じる。夫婦愛に満ちた「窓際のゴーヤカーテン実は二つ」が好き。2025/12/19
からんころん
59
12句の俳句から宮部氏がインスピレーションを得て物語を作るという形になっている。斬新な試みの本。おしゃれだしひとつひとつのお話も面白くとてもよかった!この俳句からどんな物語が立ち上がるのかワクワクしながら読んだ。12句の俳句はプロによるものではなく、宮部氏のお仲間BBK(ボケ防止カラオケ)のメンバーに呼びかけBBK(ボケ防止カラオケ)は(ボケ防止句会)の意味も持つようになったとの事。カラオケ歌ったり句を詠んだりなんとも楽しそうで憧れます。2巻3巻と続けていきたいとの事とっても楽しみです😊2026/02/12
ベローチェのひととき
53
妻から廻ってきた本。12編からなる短編集。本書は筆者のの知り合いBBKの会の方々が作った俳句をモチーフとして想像を膨らまして作った短編の数々です。ミステリー、ホラー、社会派など様々なジャンルの物語があって、とても満足できました。個人的には、「薔薇落つる丑三つの刻誰ぞいぬ」の物語が良かったです。2巻、3巻と続けていって欲しいです。2026/07/10




