内容説明
戦場という,神なき終末世界を作ったのは人間に他ならない.画家の眼は戦争の真実をどのように捉えて表現に結びつけたのか.そしてそれらはなぜ私たちの心を打つのか.絵画,写真,彫刻,慰霊碑など200点超の戦争美術をカラー図版で紹介し,ゴヤやピカソ,フジタらによる名品の意味に迫る.戦争と美術の歴史を一望する.
目次
はじめに
第Ⅰ章 戦争美術のはじまり――古代からルネサンスまで
第Ⅱ章 惨禍はどう描かれたか――近世の戦争
第Ⅲ章 日本の戦争美術――中世から日清・日露戦争まで
第Ⅳ章 国家は美術と手を結んだ――第一次世界大戦
第Ⅴ章 美術作品と偏見――第二次世界大戦
第Ⅵ章 「どうかよい絵を描いて下さい」――戦時中の日本
第Ⅶ章 記憶の芸術――二十世紀後半から今日まで
おわりに――戦争美術とは何か
あとがき
主要参考文献
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
バーニング
4
戦後80年を期に出版されたというよりは著者が大学院生だった時代から関心のあるテーマであり、かつ勤務先での神戸大学における一年間の講義をベースにした新書であるとのこと。古代から近現代までの西洋美術史をベースとしながら日本の戦争画の歴史(元寇から第二次大戦〜その戦後まで)を収めるという大胆な構成で、やや駆け足ではあるが図版の多くがカラーで掲載されていることもあり、一冊で深い学びの得られる新書だった。2025/12/19
NorthVillageHRE
3
ウッチェロなどの作品がのどかに見えるのは、ルネサンス期の戦争が実際コンドッティエーレ主導のそういう性質のものだったから/《ヤッファのペスト患者を訪れるナポレオン》には「ロイヤルタッチ」の伝統の継承がみてとれる/ゴヤは親仏派であり、戦後にフランス軍の暴虐さを描いたのには保身戦略という側面もあった/《虫合戦図》がおもろい/レジェにおいては、キュビスムと身体の損傷という大戦の凄惨な現実が奇妙に融合/ヒトラーは戦意喪失をもたらしそうな作品も評価し、「時代の象徴」の創造を目指していた2025/12/04
しんなきさら
0
長らく政治権力と密接な関係にあった美術において、「戦争」というテーマは切っても切り離せないはず。でも、案外、戦争美術全般の解説本はなかったように思います。本書は立派な専門書にしてもよかったのではと思わせる圧巻の通史で、鎮魂という面も押さえているのがよかったです。そうなると、美術と呼んでいいのか迷うような素朴な表現も出てくるわけで、ある部分では民間の宗教美術に接近していくのかもしれません。図版はカラーと白黒が見開きで交互にくるパターンでした。2025/12/19
miharasi_mamiya
0
古代から現代までの戦争が美術としてどう表現されているかの歴史。さまざまな作品が掲載され、作品を見ながらこれがどう表現されているのかを文章とともに確認できる。絵画以外に彫刻、慰霊碑なども。愛国心高揚などの主題から反戦のメッセージが込められるようになるなど、戦争の表現は幅広いものになっていく。ゲルニカなどのように現代的表現で描かれた作品も複数あるようだ。2025/12/22
キャラ
0
ウッチェロ《サン・ロマーノの戦い》、ウエスト《ウルフ将軍の死》、ドラクロワ《キオス島の虐殺》、ナッシュ《私たちは新しい世界をつくっている》、ヴァロッドン《ヴェルダン》、鶴田吾郎《神兵パレンバンに下す》、藤田嗣治《シンガポール最後の日(ブキ・テマ高地)》2025/12/11
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