内容説明
心身を新たにまなざす
近年、日本の歴史学で話題になっているもののひとつに「感情史」がある。それは、ひとことで言うなら、思想の歴史と身体の歴史、主観性の歴史と社会的・文化的な歴史とが交錯するアリーナだ。
今日の私たちが「感情」とみなすもの、つまり、悲しみ、メランコリー、恐怖、喜び、怒り、熱狂、共感、愛……といった精神状態は、言語、文化、信仰、生活様式における長く多様な歴史的変化の産物である。
そこで著者は、さまざまな感情の観念の変遷を古典古代の史料にまでさかのぼり、ときにはディズニーの映画や著名なポップ歌手、シェイクスピアやワイルドなどの文学作品を例に挙げ、また絵文字についての説明を取り入れたりしながら、一般読者にもわかりやすく論じる。
本書は、「emotion(エモーション)」という言葉の問題に始まり、感情と道徳/宗教、あるいは感情と医学的な次元の問題などを含め、忘れ去られた感情や近代的な感情体制の構築などの事例を数多く取り上げる。そしてこのように、過去のさまざまな感情のあり方を浮き彫りにし考察することは、現在の私たちの感情へのまなざしに新たな光を当てることになるだろう。
【目次】
序文
謝辞
第1章 過去の鼓動
第2章 悲哀の縮図
第3章 情念から絵文字へ
第4章 恐怖、そして幸せの追求
第5章 憤激のすべて
第6章 愛を探して
訳者あとがき
図版一覧
参照文献と読書案内
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
rinakko
9
以前読んだ『感情史とは何か』の内容がとてもよくて、感情史に更に関心を持った。こちらはわかりやすい入門書であり、また違う面に目を向けさせられる。本来の「ノスタルジア」は致命的にもなりうる病気だった。目に見えない感情は教育や共同体の合意によって名付けられる。『イリアス』の「怒り」が如何に現代のそれとかけ離れたものか。表面的なほほ笑みは、強いられた快活さで抑圧を覆い隠す(花嫁は絶望でいっぱいになりながら他人のために幸せを演じる)。そして「愛」は感情なのか。愛が感情史の中心にあることを、論証する章で締めくくられる2025/09/22
shin_ash
5
感情史が新しい分野であるためか広範な話題でつかみどころがない面もあるが興味深い内容だった。「感情的なるな」などと日常的に言うが、改めて感情とは何か?と考えさえられる。また本書の主張の通り単純に分類できるものでも普遍的なものないだろう。ますますこの感情なるものをどう捉えたものか?と思う。多分、構成主義的なもの方が個人的には好みで理解はしやすい気はするが、当人だけでなく相手がいたり状況も社会規範も文化的な流行り廃りも無関係ではないだろう。そう言う意味では学祭的な分野なのだろう。もう少し色々掘ってみたくなった。2025/12/06
Ryo Sogawa
1
人間の感情についての見方や表現の仕方の変遷などについての考察2025/10/05
やっこ
1
感情は生物学的な普遍的現象ではなく、歴史的・文化的に構築された複雑な社会的産物 スコットランド啓蒙思想家たちによる感情概念の転換 特にヒュームやトーマス・ブラウンらは、感情を従来の道徳的・宗教的枠組みから解放し、より個人的で内面的な経験として再定義 感情を通じて、人々は「自分自身と世界についての信念を表現し、理解する」のであり、単なる生物学的反応として還元することはできない2025/09/03




