「なむ」の来歴

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「なむ」の来歴

  • ISBN:9784781625089

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内容説明

日本、韓国、沖縄、どこへ行っても本は木(なむ)で出来ていた。

●概要
「三十代初めまでは身近に詩があった。だからこの本にもちょくちょく自分の書いた詩が顔を出す」。著者がこれまで生きてきた日本、韓国、沖縄で感じたこと、言葉にしたこと、詩で表現したこと。三点測量するように書いてきたエッセイを集大成。

●本文より
韓国に来る前に持っている本を全部売った。古本屋のおじいさんが部屋まで来てくれて十年間私が引越しのたびにひきずって歩いた活字の群れをそっくり引き取ってくれた。さよなら 私の本たち。それはたいそう重かった。
「本って、本当に重いですよね」私が言うと おじいさんが答えた。「さようでございますもともと木でございますからね」(第一章「プラタナス」より)

三十代初めまでは身近に詩があった。だからこの本にもちょくちょく自分の書いた詩が顔を出す。日本語でも一冊詩集を出し、ソウルにいるときには朝鮮語で書き、それらが一九九三年に韓国の民音社から『入国』として出版された。外国人がハングルで書いた珍しい本ということで、当時かなり話題になった。それはちょうど、韓国でいくつかの詩集が驚異的なセールスを記録していた時期と重なる。特に、崔泳美(チェ・ヨンミ)という詩人の『三十、宴は終わった』(日本語版はハン・ソンレ訳、書肆青樹社)が一九九四年に刊行され、その年だけで五十万部以上を売り上げるという空前のベストセラーとなった。私の詩集が読まれ、すぐに重版がかかったのも、こうした流れの中のできごとだ。民主化からあまり時間が経っていなかった九〇年代初頭の韓国人たちは好奇心に満ち、新しいもの、変わったものに対して寛容だった。(「あとがき」より)

●著者プロフィール
1960年、新潟市生まれ。翻訳者。著書に『増補新版 韓国文学の中心にあるもの』『本の栞にぶら下がる』『隣の国の人々と出会う――韓国語と日本語のあいだ』。訳書にチョ・セヒ『こびとが打ち上げた小さなボール』、ハン・ガン『ギリシャ語の時間』、チョン・セラン『フィフティ・ピープル』、チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』、ファン・ジョンウン『ディディの傘』、李箱『翼――李箱作品集』、パク・ソルメ『未来散歩練習』などがある。2015年、共訳書パク・ミンギュ『カステラ』が第一回日本翻訳大賞受賞。2020年、訳書チョ・ナムジュ他『ヒョンナムオッパへ』で第18回韓国文学翻訳大賞(韓国文学翻訳院主催)受賞。2025年、ハン・ガン『別れを告げない』で第76回読売文学賞(研究・翻訳部門)を受賞。


【目次】
「なむ」の来歴もくじ
一章 「なむ」の来歴
二章 沖縄で考えたこと
三章 言葉と言葉の間で
四章 コラムの日々
五章 日常と本と
六章 詩、夢、訳
あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

かもめ通信

21
エッセイ集。タイトルにある「なむ」とは韓国語で「木」のことだそうだ。留学先のソウル、その後移り住んだ沖縄、東京、故郷新潟。「いろいろな木の育つ土地を尻取りのように」して歩いてきたという斎藤真理子さん。翻訳家であり、詩人であり、読書家であり、母親であり、常に深い洞察力と、広い視野で常に物事を真剣に考える一人の人としての著者の思考が、美しい言葉で熱く力強く綴られていて、驚くほどの読み応え。すごく良かった。2026/01/26

ゴーヤーチャンプルー

8
「なむ」とは韓国語で「木」という意味だそうだ。本はもともと「木」で出来ている。とは言ってもその来歴を深く掘り下げるという内容ではなかった。斎藤真理子氏は自分に韓国文学の面白さを教えてくれた方。生まれ故郷の新潟や高卒後の東京、韓国、沖縄といったところでの生活、そこで出会う人々や言葉や樹木などへの視点で書かれたエッセイ。今回も韓国作品いくつか紹介されていてどれも良さそう。いくつか読んでみよう^⁠_⁠^2026/03/26

timeturner

7
読んでいて「今はいつ? あなたは何者?」状態に。あとがきにある通り「寄せ植えみたいな本」だ。それでいて読み終えてみると「斎藤真理子」という人の生き方・考え方が濃く太く浮かび上がってくる。一生懸命になりすぎてまわりが見えなくなることはあっても、見ないふり、気づかないふりは決してしない人だ。どんなにつらいことでもきちんと知ろうとする。2026/02/24

二人娘の父

7
韓国文学翻訳の第一人者・斎藤真理子による思考の集大成。日本、韓国、沖縄という三つの土地を「三点測量」(帯より)するように綴られた言葉たちは、単なる伝達手段としての言葉ではなく、土地に根を張り呼吸する「生命体」とも言えるようにも思う。地上戦の記憶を持つ沖縄と韓国の痛みに誠実に寄り添い、自らの内側から湧き出す言葉で、他者への想像力を編みなおす。言葉が武器として消費される現代において、土の匂いがする本書の文章は、私たちが世界で呼吸するための大切な「酸素」となって心に深く染みわたる。2026/01/20

平坂裕子

3
持っていた本を全部売った時それはたいそう重かった。取りに来てくれた古本屋のおじいさんが「さようでございます もともと木でございますから」。日本、韓国、沖縄、どこに行っても本は木(なむ)でできていた。沢山の作品に出会い、翻訳してきた作者の心の揺れ動く気持ちが熱く伝わる一冊であった。2026/01/31

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