内容説明
北欧型福祉国家フィンランド。優れているといわれる福祉制度の形成には、教会をはじめとする民間組織の活動や少数派言語の問題、地域の特性といった歴史的偶然が反映されていた。「老いの社会問題化」という語られ方の背景を、文化人類学的アプローチによる研究で読み直す。進んだ福祉/遅れた福祉という固定観念を揺るがす1冊。
目次
まえがき
序章 老いること、その福祉について
1.なぜ「老い」は問題なのか
2.老年は社会的に排除されているか
3.制度問題への人類学的アプローチ
4.「社会的なもの」への期待
5.望ましい老後
6.調査地の概要
【第1部 老いと福祉の研究史】
第1章 20世紀福祉思想にみる人類学の功罪
1.福祉社会論の隆盛
2.ルース・ベネディクトとノーマライゼーション
3.ブロニスラウ・マリノフスキーと地域福祉
4.マルセル・モースと福祉国家における「連帯」
5.2 つの全体論―21 世紀の福祉社会と人類学
第2章 老いと福祉の人類学
1.老年人類学の成立
2.ナーシングホーム民族誌の隆盛
3.人類学的福祉研究の拡大
4.老年人類学の現在
【第2部 群島町の「背景」】
第3章 北欧型福祉国家フィンランド
1.「北欧」とは何か
2.福祉国家フィンランドの概略
3.群島町の地域福祉がめざすもの
第4章 幸せなマイノリティ
1.群島町の言語状況
2.「幸せな人びと」とは何者か
3.ステレオタイプの否定
4.ソーシャル・キャピタル論の隆盛
5.話者人口減少をめぐる差異のポリティクス
第5章 福祉の担い手としての教会
1.ルシア祭にみる慈善活動
2.福祉思想の系譜
3.地域社会の形成と教会
4.ディアコニという職業
5.福祉国家の細部へ
6.ルシア祭にみる慈善・博愛・福祉
【第3部 老いと福祉の現場で】
第6章 群島町の福祉生活
1.地域福祉の全体性をめぐって
2.模倣と反復が織りなすもの
3.互酬としての福祉
第7章 自立のストラテジー
1.「自立」をめぐる人類学
2.群島町のホームサービス
3.「自立」を失う
4.自立のストラテジー
第8章 老いを歩む
1.老いの自己論
2.共同経験としての老い
3.老いていく自己と他者
終章 老いと福祉の人類学
1.老いの社会問題化を越えて
2.社会福祉に埋めこまれた贈与
3.つながりへの懐疑
4.老いと福祉
あとがき
文献一覧
人名/事項索引



