内容説明
台湾におけるディアスポラ経験の歴史的構造と文化的越境
移民・植民・遺民――台湾の歴史に刻まれた多層的なディアスポラ経験は、地域的特殊性を超えて世界史的普遍性を帯びる。本書は、1930年から50年代の台湾の文化再構築、言語政策、文学の越境と再生を通じて、アイデンティティの揺らぎと文化的意味の生成を探る。制度分析と個人の語りを交差させながら、台湾という場における「存在/不在」の歴史的位相を照射する。
目次
謝辞 iii
序論┃1
故郷と異郷 9
第一章┃張深切における政治と文学――自伝作品に映された人生の足跡 10
はじめに 10
1 日本統治下の台湾知識人における張深切の位置づけ 12
2 民族意識のめざめ 13
3 「台湾自治協会」時代 16
4 「広東台湾革命青年団」時代 17
5 演劇活動と政治運動 19
6 「台湾文芸聯盟」時代 23
7 『中国文芸』時代 26
8 台湾帰還と隠棲 30
おわりに 32
注 33
第二章┃楊基振とその時代――日記に写されたある台湾知識人の心理変化 37
はじめに 37
1 楊基振とその時代 41
1―1 学生時代 41/1―2 満鉄時代 43/1―3 華北時代 46/1―4 帰台後 50
2 日記に見る歴史叙述と時代 51
2―1 戦時華北地区の台湾人の交遊関係と生活情景 52/2―2 戦争の時局に対する認識と戦後経済の混乱 55/2―3 日本敗戦後の華北国民党軍・八路軍・日本軍 58/2―4 戦後の大陸に旅居していた台湾人の財産問題と帰台までの経緯 61/2―5 戦後台湾での諸般の世情――二二八事件前後 64
おわりに 65
楊基振略年譜(稿) 71
注 75
第三章┃台湾知識人における「抗日戦争」 78
はじめに 78
1 呉新栄の「抗戦」 80
1―1 「抗戦」勝利後の台湾作家 80/1―2 呉新栄の「抗戦」日記 83/1―3 小結 87
2 陳けい貞の「抗戦」 88
2―1 台湾光復初期の「天才少女作家」陳けい貞 88/2―2 陳けい貞の「抗戦」創作 93/2―3小結 100
結語 101
注 103
戦後台湾文化の再構築 9
第四章┃戦後台湾における「国語」運動の展開――魏建功の役割をめぐって 108
はじめに 108
1 国府の台湾文化再構築政策 110
1―1 「台湾接管計画綱要」 110/1―2 台湾省行政長官公署の具体策 112
2 魏建功の赴台 115
2―1 戦後初期の「国語」学習状況 115/2―2 魏建功の赴台 119
3 台湾省国語推行委員会の設立 123
3―1 魏建功の構想 123/3―2 台湾省国語推行委員会の設立と工作内容 129
おわりに 135
注 137
第五章┃戦後台湾における中国人木版画家黄栄燦の足跡――魯迅木版画思想伝播の役割をめぐって 142
はじめに 142
1 黄栄燦の赴台 144
2 黄栄燦の魯迅木版画思想伝播活動 151
結語 163
注 164
第六章┃流用(appropriation)と統合(integration)――戦後台湾における台湾研究の展開 170
はじめに 170
1 台湾省編訳館の設立 171
1―1 陳儀の台湾接収と戦後台湾文化再構築構想 171/1―2 許寿裳の台湾赴任と台湾研究構想 175
2 台湾省編訳館台湾研究組の業務内容と成果 180
2―1 許寿裳の台湾文化認識 180/2―2 台湾省編訳館台湾研究組の業務内容 184/2―3 台湾省編訳館の廃止と台湾研究組の成果 189
3 台湾省編訳館撤廃後の台湾研究組構成員のその後 200
結語 203
注 206
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