内容説明
偵察機の墜落により、おれは惑星パラーザの海に着水した。だが、救援要請は徒労に終わる。陸地を持たず、夜が訪れない表面積8億平方キロの海原で、自らの位置を特定する術はなかったのだ―通信機の対話だけを頼りに、無人の海を生き抜いた男の生涯「漂った男」、ホット・ジュピターに暮らす特異な知性体の生態を描き、SFマガジン読者賞を受賞した表題作ほか、環境と主体の相克を描破した4篇を収録。著者初の作品集。
著者等紹介
小川一水[オガワイッスイ]
1975年岐阜県生まれ。1993年、中篇「リトルスター」が集英社ジャンプノベル小説・ノンフィクション大賞佳作に入賞してデビュー。1996年、同賞大賞受賞作『まずは一報ポプラパレスより』で単行本デビュー(河出智紀名義)。以後、『群青神殿』『導きの星』『ハイウイング・ストロール』など、丹念な取材に裏付けられた斬新なテーマのジュヴナイルSFで好評を博す。2003年発表の月面開発SF『第六大陸』(ハヤカワ文庫JA)では「ベストSF2003」国内篇第2位を獲得、第35回星雲賞日本長編部門を受賞した。宇宙作家クラブ会員
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感想・レビュー
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みっちゃん
119
ひたすら【天冥の標】の新刊を待ちわびる今日この頃。そうだ!今こそ未読の小川作品を読もう!過酷な環境でしなやかに力強く生き延びる彼ら。どの作品も、この設定からこの展開ですか!?と嬉しい驚きをもたらしてくれる。あっ、このアイディア【天冥の標】にも活きてるわ!と思ったりそれも楽しかった。ユーモラスな語り口ながら、人と触れあい繋がる事がどんなにかけがえのない事か、気づかせてくれた【漂った男】がやっぱり一番だったなあ。2014/07/13
文庫フリーク@灯れ松明の火
117
「ギャルナフカの迷宮」「老ヴォールの惑星」「幸せになる箱庭」「漂う男」 4話どれもが魅力的だが、地下迷宮に囚われた囚人たちが、秩序ある社会を創りあげる「ギャルナフカの迷宮」、その対を成す「漂う男」がなんとも秀逸。Uフォンという通信機器だけを支えに、海しかない無人惑星パラーザを漂流し、救援を待つ男・タテルマ少尉。28キロ四方の平面に置かれた直径1ミリの砂粒の存在と化し、しかも潮流に乗って漂う、救援が極めて絶望的な設定。シンプルな設定だけに、タワリ中尉ら男のダンディズムが魅せる。「足が、踏んだ」素っ気ない→2014/11/24
いおむ
93
堪能しました。正直中短編よりはずっとながくその世界に浸れれる長編の方が好みなのですが、この本に収められた4編の作品はどれも丁度良くそれぞれ素晴らしかった。SFではお馴染みのシチュエーションではあるが、小川さんらしいひねりとアイディアで十分楽しめる2作品「老ヴォールの惑星」「幸せになる箱庭」と極限の状況に陥った主人公の体験を描く「ギャルナフカの迷宮」「漂った男」の2つ。特に最後の「漂った男」が今の自分には一番面白かったです!これだからSFはやめられな(^_-)-☆2019/05/12
mihya
91
中短編4本。どれも読み応えあり。 「漂った男」が凄かった。不時着した水の惑星でただ通信するだけで漂い続ける軍人の話。通信相手のタワリ中尉との関係も良かったし、最後の緊張感には思わず息を止めて読んでしまった。 面白かった。2023/08/05
こら
85
小川一水の優しい文章で紡がれる優しい物語が大好きです。初めての短編集でしたが、その癒やしのエッセンスがどの作品にも凝縮されてます。久しぶりのSFだったけど、読後、やっぱりSFっていいなって気持ちにしてくれる素敵な作家さんです。よし!次の短編集も読もう!【追伸】どうしても書かねばと思ったので……「漂った男」のタワリ中尉、あんた漢やで!2022/01/27
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