内容説明
ゲームシナリオの仕事が行き詰まり、逃げ場を求めるように応募した小説でデビューしたわたし。その反動で鬱になり苦しむ中で思い出したのは、子供の頃のこと。両親は折り合いが悪く、父は病と闘っていた。その中で生き延びるためにわたしは書き始めたのだった。自身の「夜明け」のため半生を正面から描き切った渾身の跳躍作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
91
読んでいて自分に正直でいることの迷いというか揺らぎが胸に突き刺さってくるような小説だった。題名の"弔い"は亡くなった父親に向けてだけではなく、むしろそれまでの自分に対してもあったように思う。両親と距離をとって生活していた語り手は、小説の題材に行き詰まって父親について書くと担当者に伝える。病気に苦しむ父親を避けた幼少時。再発した父親に社会性という隠れ蓑を被って対応した少し前の自分。かつての自分の声、父親の声が迫る。今度は避けない。生業として書く。落とし前を付けるために。生きているみっともなさはかわいいのだ。2026/02/15
小太郎
45
「ここはすべての夜明けまえ」が素晴らしかったので読んでみました。この本は「ここは・・」の前日潭、それもリアルな私小説で書かれた家族の話になっています。「ここは‥」を読んだ時にどんな人が書いているのか気になりましたが、この本で作者があの小説を書いた経過を知りました。自分としては孤独という形をを思弁的、観念的に描いたフィクションだと思っていたのですが、この本を読む限り勿論フィクションなんですが、かなりリアルな心情だったことが分かりました。作者の心の叫びと言ってしまえば身も蓋もないけれど。★3.52026/05/13
よっち
29
ゲームシナリオの仕事が行き詰まり、応募した小説でデビューした織香が、その反動で鬱になり苦しむ中で子供の頃のこと思い出していく私小説。両親の不和、父の病と死、ジェンダー差別による大学進学の反対、コロナ禍での介護放棄、離散した家族の傷を振り返っていくストーリーで、織香の中の検閲官が筆を折ろうとする中、それでも書き続ける覚悟や、母親への憎悪、親の後悔の告白が痛みを伴う精密さで描かれる一方で、会話を通じた成長も感じられて、家族の複雑な関係や役割、コロナ禍に正面から向き合った痛みの中にも救いが感じられる物語でした。2026/01/27
信兵衛
24
家族関係に潜む難しい領域にあえて踏み込み、暴きたてるかのような本ストーリーに、凄みを感じます。 決して分かり易くはなく、感動を覚えるような作品でもありませんが、家族関係の真に踏み込もうとした挑戦的な作品として、評価したい。2026/01/23
くれよん
23
私小説で父を書くことで自分が知らなかった生前の父を探る。父に自問自答することによって今までのわだかまりが溶けて優しくなれたような気がする。そしてあれほど憎んでいた母をも許すことができた。娘として一歩前進。鬱という病気がよくなりますように。2026/02/24




