内容説明
S・T・バウムガートナーは九年前に先立った妻アンナの不在を今も受け容れられずにいる。書斎で彼女のタイプ原稿を読み耽り、物忘れがひどいなか、ルーツの地ウクライナを旅したときの摩訶不思議な出来事を書き残す。そんな彼に恩寵が……来るべき日を意識していたとしか思えない、オースター作品のエッセンスが宿る名作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
メセニ
14
7/10。オースターはこれまでにも生者と死者との関わりを扱ってきた。本作は一見すると同じ装いかもしれない。でも彼の作品を読んできた者なら数ページで、これまでとは異なる手触りや気配を感じるのではないか。それは目の前に見えてきたであろう死と向き合う作者自身の姿だろうか。愛する人の死、いまだ喪失感を抱える男は、現在の人たちとの関わりのなかで、妻との人生の顛末や家族にまつわる過去を回想し、生と死と向き合ったその先、己の年代記の最終章へと至り、一体何を見出したのか。最後の一文の後、静かな熱を感じながら読み終えた。2026/01/05
おだまん
13
MONKEY持ってるのに積んでしまってるので初対面。あるあるなあわただしさに続く静かな余韻が心地よい。晩年になると死がこういうふうに見えてくるものなのか。先に逝ってしまった人たちとの交流も視野に入ってくるけれど人生が続いている限りいつでも始まりなんだなってことを教えてもらいました。遺作だからなおのこと。2026/01/06
まさ☆( ^ω^ )♬
8
なんか読んだ事あるよな〜と既視感を覚えながらの読書。MONKEYで1,2,4章が初出だったのね。通して読めて良かった。これが最期の作品なのが非常に残念。ポール・オースターの作品は、まだまだ未読のものが積読待機中。読むのが楽しみだ。オースターはやはり面白い。2026/01/04
犬吉
3
バウムガートナーの語り、回想は、多くのオースター作品の登場人物とよく似た、馴染みのものだった。ただそこに、自身の人生の終末が近いことを感じている人間の物悲しさ、まだ何か成そうとすることの哀しみの様なものを感じた。オースター最後の小説を読んで、昔のものを再読したくなった。 2026/01/01
Naggy
2
鎌倉を訪れる際は駅前の書店「たらば書房」に立ち寄るのが恒例となっている。とはいえ今年はいろいろとお金を使ってしまったし、まあポール・オースターの「4321」は読んでみたいけど、置いてあっても価格的に買えないなーなどと考えながら、海外文学の棚を見ると、「バウムガートナー」が平積みされていたので、即購入してしまった。地元の本屋では絶対に起こらない出会い頭の衝突に、私はなんだか嬉しくなった。作品については、70歳を超える御大の、いつか来る死との誠実な向き合い方に感動させられた。2026/01/04




