内容説明
第38回・三島由紀夫賞候補作!
「君は今回の譲位についてどう思うかね?」
「龍の話じゃありませんでしたか?」
「そうだよ」久間さんは目を細め暗い光を溜めた。
「ずっと前から私はその話しかしていない」
龍の夢が「私」を通過するとき、この国のもうひとつの姿があらわれる――現代日本小説屈指の剛腕による、抵抗と革命の二篇。第38回・三島由紀夫賞候補作。
改元の年の異動で山奥の町に着任した公務員「私」は、集落に伝わる惟喬(これたか)親王が見たという龍の夢の伝説を追って、この国のもうひとつの姿を目撃する。(「改元」)
山あいの地主の一族に生まれた少年は、日猶同祖論を唱える父によって「世界の救い主」となるべく「十(じゅう)」と名付けられた。第二次世界大戦をまたいで繰り広げられる、めくるめく年代記。(「死者たち」)
【著者】
畠山丑雄
1992年生まれ。大阪府出身。京都大学文学部卒。2015年『地の底の記憶』で第五十二回文藝賞を受賞。『改元』で第38回三島由紀夫賞候補。
目次
改元
死者たち
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
キク
52
若い方の2作目だけど、面白かった。少なくても、登録が22人で、レビューは僕が最初というレベルの作品ではない。多分、これから認められていく人なんだと思う。すごくしっかりした文体と、若さゆえの志しがある。ユニークさだって、奥の方に若干感じられる。志しだけじゃ面白い小説にはならないけど、志しのない面白い小説を読む気にもなれない。なんなら大概の場合、その二つはお互いに邪魔をし合っているようにも思う。うまくいかない。でも、いつかすごい小説を書くという予感を感じさせてくれるって、それだけですごい新人なんだと思う。2024/12/04
スミス市松
8
伝承の古層から生じうる幻想的な現象を日常的な尺度で捉えていく語りの姿勢が好ましい。その手法は往時の南米文学を思い起こさせるものだが、本書を読み終えて物語から離れれば、読者の現実へのまなざしが幾許か豊かになり、それはわれわれの〈日常〉に立ち向かう力にもなるのではないだろうか。良作だと思う。2025/01/02
田中峰和
6
「改元」の方は純文学過ぎて、村の権力者の不気味さばかりが印象づけられた。惟喬親王が藤原氏の反対で皇位継承ができなかった。眠ってばかりの同棲相手、そこに菖蒲や龍がとうじょうしてちんぷんかんぷん。「死者たち」は読みやすく、戦前から戦後の高度成長まで親子の人生が描かれてドラマとしても楽しめた。戦死した弟の嫁を兄が妻にする。そして5年後、夫が帰ってくる。その子の十が主人公となって、親友が十の元カノを妊娠させる。元カノは学生運動でリンチ殺害される。元カノの幽霊に悩まされ、妻を殺害。十は平穏な暮らしを続ける。2025/12/30
くじらい
3
天才や! こういう小説がある限り、文学に絶望せずに済む。2026/02/18
げんなり
2
本書、短編二作品が載ってるのだけど、どちらも抜群に面白い。きちんと小説を堂々と真っ直ぐに書き尽くしている、なんていうと変な言い方だけど、それくらいに堂々とした小説だ。 表題作の完成度は凄まじくて、一読すればその威容な感じは明白。 もう一作の『死者たち』、こちらが個人的に面白かった。最初に思ったのはロシア文学、ふっとラテンアメリカ文学に変わり、気づいたら日本の近代文学のよう、そうしてそれから、とまあそんな感じでとことん楽しい。小説としては収斂とか昇華とかのない弱さも感じるけど、宿命をかわし続ける面白さ!2026/02/21




